親を見送り次に繋げる「相続プロジェクト」

うさぼう(@usabo_tweet)です。

ライフイベントの波に抗わないタスク管理」で紹介した通り、人生にはちょっとしたタスクのやりくりでは乗り越えられないような波があります。

前回記事は、Twitterなどでお世話になっている、せんりさん(@senri4000)に「介護」が仕事タスクに与えるインパクトと考慮点について紹介いただきました。

前回記事→日常生活にうまく組み込みたい「介護プロジェクト」

経験のない、しかしいつ直面するかわからないこうした内容を紹介いただけるのは本当に貴重です。その続編として、今回は「相続」について書いて頂きました。それではどうぞ!

↓↓↓

さて、ライフイベントの最後は、「相続プロジェクト」です。ここでは、通常の語義より広く、親の死を見送って次に繋げる諸々の全体を「相続プロジェクト」と呼んでおきたいと思います。

相続プロジェクトの特徴は以下の通りです。

  • 臨終から葬儀・火葬までの間、時間に追われる中で決めなくてはならないことが多い。
  • お墓・仏壇・法要は、慣習・家族の思いに近年の生活スタイルの変化が絡んで様々。
  • 直後から必要な大量の事務手続。出向く必要が多く、忌引休暇の間には終わらないかも。
  • 相続手続は、4ステップのそれぞれがそこそこ重い。一気に終わらないのでそのつもりで。

臨終から葬儀・火葬までの間、時間に追われる中で決めなくてはならないことが多い。

長い病気の末であっても、事故であっても、病院で亡くなることが多いと思います。臨終を告げられた後、病院からは早々に遺体を移動するように促されます。スペースの関係で自宅に連れて帰れないため、葬儀会館に直接搬送することも多いようです。

生前から葬儀社の会員になっている場合には、病院から電話すれば近くの葬儀会館に空きを見つけて手配をし、搬送者を病院まで回してくれるでしょう。そうでない場合にも、病院が葬儀社を紹介してくれたり、ネットで探したりすることももちろん可能です。が、葬儀社に搬送を依頼した場合には、そこでそのままお葬式をすることになります。葬儀費用の全体が見えない中ですぐに決めるのは難しいかもしれません。

いずれにしても、家族としては臨終を迎えて動転している中で手配を迫られることになるため、亡くなった後に遺体をどこに搬送するのかは、可能なら前もって決めておきたいことの一つです。

お付き合いのある菩提寺(檀家寺)がある場合には、そちらに連絡して葬儀の相談をする方がよいようです。菩提寺が遠方であれば、近所の同じ宗派のお寺を紹介してもらいます。葬儀社に葬儀をお願いするにしても、宗派がわからないと困るので、菩提寺がない場合にも家族や親族に宗派を確認する必要があります。いよいよわからない場合は葬儀社に紹介してもらう手があります。

近年の傾向として、家族のみ(+近親者)で小規模に行う家族葬や葬儀を行わず火葬する直葬が増えているようです。故人が高齢で親族や社会でのお付き合いが少ない場合に向く形かと思います。故人とお別れがしたいという親族や知人が多くある場合には、後日の対応がかえって大変になる場合もあるため、一般葬の方が適しているかもしれません。

このような葬儀の規模、予算を含め、どんな葬儀にしたいのかを一つ一つ決めていく必要があります。葬儀社にお願いする場合には、いくつかのパッケージを示されるでしょうから、それを手掛かりに、どういう形にしたいかを考えていきます。

基本になるのは、家族がどう故人を送りたいかということと、故人に関わりのあった人がどのくらいいてどの程度のおつきあいだったのか、だろうと思います。このあたりも、前もって話し合っておくと迷う場面が減って進めるのが楽になります。

お墓・仏壇・法要は、慣習・家族の思いに近年の生活スタイルの変化が絡んで様々。

お葬式が終わると仏事関係はひと段落ですが、四十九日、納骨、仏壇とこれまた決めなくてはならないことが多くあり、あまり時間の余裕がないのが実際です。多くの場合、四十九日の法要は行うと思いますから、どのような規模と形式で行うのかを決め、それに合わせて他のスケジュールも組んでしまうと回りやすいでしょう。

葬儀と同様に近年変化が激しいのが納骨のスタイルです。田舎に先祖代々のお墓があるけれど、お墓詣りに行くのもままならないのでこれを機会に改葬を考えるケースもあります。受け継いできたお墓はないので新しく納骨を考える必要がある場合、墓地を買うのか、納骨堂を考えるのか。自分と子供がこの先お墓の世話をし続けることが現実的にできるのかも考える必要があります。

遠方ではお盆やお彼岸のお墓詣りも難しく、お墓が荒れてしまうのも忍びないので、と近くの都市型納骨堂で永代供養を申し込む方が増えており、お寺や葬儀社が営む納骨堂は予約でいっぱいのこともあるそうです。

代々受け継がれてきた仏間や仏壇がある家も多くはないでしょうから、四十九日の後に位牌や遺影をどのようにしたいかも考える必要があります。新たに仏壇を購入するのもスペース的に難しかったり、日常のお勤めはどうするのだろうなど考えてしまいますね。最近は、リビングにおいても違和感のないモダンな仏壇も増えていますので、仏具店に足を運んでみても良いと思います。

直後から必要な大量の事務手続。出向く必要が多く、忌引休暇の間には終わらないかも。

直後の手続きとして必要になる死亡届と火葬許可申請書は、葬儀社の方が代行してくれる場合が多いようです。お通夜とお葬式の準備でてんやわんやの中、役所に行くのはかなり大変ですから、代行サービスはかなり助かります。

会社員の場合、親の死亡でもらえる忌引休暇は5日〜7日程度かと思います。役所関係・金融関係の手続きが多いため、平日日中でないとできなかったりしますから、できるだけ休暇中に済ませてしまいたいところです。が、手続きが一度で済まなかったり、こちらの手続きが完了してその証明書を持ってあちらの手続きをする必要があるなど、ガントチャート書きたい気分になったりすることもあったりして、残念ながら数日では必要な手続き全部は終わらないように思います。

この辺りは、解説書も種々出ていますので、参考にして漏れのないように行いましょう。期限のあるものを最優先すること、同居していた家族に影響があるもの(遺族年金やライフラインの名義変更など)を次に優先することを心がけておけば良いと思います。

相続手続は、4つのステップがあり、それぞれがそこそこ重いです。一気に終わらないのでそのつもりで臨むことが肝要

  1. 人的範囲・物的範囲の確定
  2. 話し合って分ける
  3. それを反映させる
  4. 相続税申告する

相続税の対象が拡大しているため、庶民にも関係する可能性があります。相続手続自体に期限はありませんが、相続税の申告には期限があるので注意しましょう。

まず、遺言がある場合はその関係の手続きが必要です。遺言には、財産相続だけでなく、葬儀の方法や納骨についての希望が書かれていたりしますので、早めに確認しておくようにしましょう。

相続人の確定は、故人の 出生から死亡までの連続した戸籍を揃えることで行います。出生から亡くなるまで同じ役所に戸籍がある方は稀ですし、戸籍側の事情で( コンピュータ化による改製など)同じ役所であっても複数の戸籍だったりしますので総ざらえする必要があります。

遠方の役所に戸籍が存在する場合には、郵送申請をして送ってもらいます。申請様式がインターネット上に用意されている場合も多く、自分でできますが、面倒な手続ではあるので、司法書士さんなどプロの手を借りることもできます。

役所でしっかり管理されている戸籍に比べて、相続財産の確定の方が難題だったりします。金融機関だけでもあちこち分散されていて、家族に内緒の財産もあったりして、通帳のありかがわからない、最近だとWEB通帳になっていてそもそも通帳がないので存在の手がかりもなかったり。

証券口座も同様ですね。お父さんがやっていた投資信託についてお母さんが全然知らないなんてこともよくありそう。郵便物などを手掛かりにあたりをつけていき、不動産登記を確認したり、銀行で残高証明書を取り寄せたりしていきます。

人と財産が定まったら、相続人で話し合って分け方を決めます(遺言がない場合)。財産が多いときなど、二次相続のことも考えて分割方法を決めた方が良いこともあるようです。片親が亡くなって配偶者が相続すると、さらに残された親が 亡くなったときに子へ相続することになり、最初に直接子が相続する場合は1回ですむ相続税が2回発生するためです。

分け方を決めたら、それを遺産分割協議書の形にします。この遺産分割協議書が、以後の相続手続の全てのよりどころになります。

サラリーマンとしては、日中休みを取って役所や金融機関に出向く機会を減らしたい。と思うと、順序が重要で、こっちの手続かあっちに絡んで複雑怪奇になりがちです。ここでもガントチャート書きたいよ!なのです。自分のときは、最終ステージ近くになってようやくチャートを描きましたが、もっと早く書いておけばよかったです。

↓チャートが掲載された記事

終わりに

せんりさんに介護と相続について寄稿頂き層が厚くなりました。いくらタスク管理を周到にやろうとも、大きなライフイベント発生時にはその特徴を踏まえたプロジェクト管理が求められます。このシリーズ記事が役に立てば幸いです。

【シリーズ記事の一覧】

  1. 一人暮らし
  2. 結婚
  3. 出産
  4. 住宅購入
  5. 介護
  6. 相続 ←本記事

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で