論文のガイコツ?アウトラインを育てていこう~ぱうコメ卒論編その2

ぱうぜセンセのコメントボックス
【前回までのお話】卒論指導が始まった「ぱうゼミ」。進吾くんと明日香さんは、自分のテーマに関連する資料や論じ方の参考になる本を、幅広く集めるようにと指示を受けて、ぱうぜ研究室を後にした。
さて、もうすぐ夏休み・・・明日香さんも進吾くんもそろそろ、戻ってくるかな。

前回のお話はこちら:「卒論」ってどんなもの?まずは広く探索してみよう~ぱうゼミ卒論編その1

資料集めの次にすること

「センセ、やっと二人とも進路が決まりました・・・!」
「第一志望のところを最終面接で落とされたときはほんとどうしようかと思いましたけど、なんとか、希望の職種につくことができそうです」
そういって胸をなで下ろすのは、いつか自分の店を持ちたい、と考えている明日香さん。まずは、チェーン展開をしている会社で修業をすることにしたようだ。
「俺は割と早めに内々定が出ていたんで、明日香さんをなだめたりしながら資料探してました」
進吾くんは結構要領がいいからなあ。
「それで、『進路が決まったら卒論指導本格化するから、研究室にいらっしゃい』とセンセが言ってたのを思い出したんですけど・・・次は何を?」
「うん、それじゃ、次はアウトラインとかを・・・言い直すと、『論文のガイコツ』を作り始めよう」

「え、アウトラインって、論文のガイコツってなんですか?」

あれれ、レポート作成のときに説明しなかったっけ・・・こりゃ、もう一度説明し直さないとなあ。

(前回のお話はこちら)「卒論」ってどんなもの?まずは広く探索してみよう~ぱうゼミ卒論編その1

アウトラインとは?

「レポートを書くときに、『いきなり書き始めてはダメだよ』って言ったの、覚えてる?」
「あ、はい。たしか、調べてきたことを書き出してみて、重要そうなことをピックアップして、・・・ええと」
小見出しを並べた目次みたいなのを作ってから文章化しろ、でしたっけ」
だいたいのことは覚えているみたいだね。
「そう、その回で説明したのが、『アウトライン』だよ」
発想→「整想」→成果物!伝わるように産み出すための3つのステップ
いきなり書き始めても、うまく伝わりません
「ああ、そうだった。まずは自分の書きたいことについて、仮の目次をつくってみる。そういうイメージでしたね」
「これを作ると、文章全体を構造化できて、段落ごとのつながりもわかる、ってことでした」
「しかも、書いているうちに足りないものがわかってきて、より具体的になっていく。スカスカなものを、何度も書き直して具体的にする。それが『育てていく』ってことでしたね」
そうそう。そこまで覚えているなら問題ない。

マイルストーンを決める

「ところで、君たちの卒論提出期限って、いつだっけ?」
なにせ、教員にとっても学生にとっても初めての卒論、まずは〆切りを確認しておこう。
「え、1月の最初の金曜日です。冬休みに頑張ればなんとか・・・この夏は富士山に・・・」
あ、明日香さんはもう夏休みの予定に頭がいってしまっているなあ。
「いいや、その考えは甘いよ。私が初めて長い論文を書いたとき、自分が思っていたよりもずっと大変で、なかなか第一校すらできあがらなかったんだ」
12月末提出、って決まっていて、9月末には先生に一旦みせるつもりが、第一校ができあがったのは11月中旬。そのあとも何度も何度も直すことになったんだ・・・。今だって、論文を書くのにはとても時間がかかるし、読み通りに仕上がったことなんてないよ。
「そうだよ明日香さん。たった5枚のレポートだってなかなか出来なくて、なんとか提出はしたけど『もっと時間があれば直せたのに』って悔しがってたじゃないか」
「あー、そうでした・・・どうしてそんなに時間がかかっちゃうんでしょうねえ」
「一番は、『なかなか書き始められない』だね。考える時間ばかりが長くて、踏ん切りがつかない」
「あ、これよくやっちゃいます。〆切りがまだ先だと思うと、ゆっくりしちゃうんです」
「だから、マイルストーンを決めよう。『この時期にはここまで進む』という目標だね。1ヶ月に1回、成果物を出してもらうことにする」
「調べてきたことを報告するってことですか?」
いやいや、そこに「初めての論文」のトラップがある。単に「調べただけ」では、「問い」に答えたことにならないよ。
「卒業論文は『問題を立てて自分で論じる』タイプのものだから、それじゃあ甘いね。ぱうゼミのマイルストーンは、次の通りだ」
いちどホワイトボードに書きだしておこう。

ぱうゼミの卒論スケジュール
1.【第1の課題】10月上旬:「論文のガイコツ」〔簡略版〕を作ろう。資料はA4で1枚で作成、5分間口頭報告
2.【第2の課題】11月上旬:進捗報告。内容自由。資料はA4で2枚、10分間口頭報告
(12月上旬の回は、「その時点で困ったこと」を報告し合う予定)
3.【第3の課題】12月28日:その時点での「論文」本体をオンライン提出すること。
4.【提出日】来年1月8日:決められた様式に従って論文本体(おおむねA4で40頁くらい)を執筆し、提出する。
5.【提出後の課題】1月15日:提出した論文から、目次+要旨(合わせてA4で4枚)を作成して、15分口頭報告

「おおむね、1ヶ月に1回、君らと一つ下の学年のゼミ生とで合同ゼミにするから、そこで成果物をもとに口頭報告をしてもらうよ」
「ええと、一つ下の学年って・・・ああ、かすみさんたちか」
「後輩にとっても『卒論』は謎だらけだからね。よい聴衆になってくれると思うよ」
彼女たちにも手伝ってもらう予定なんだけど、それはまだ内緒ね。

第一の課題:論文のガイコツって?

「さて、それでは、夏休みの間は、資料収集を続けながら【第1の課題】、論文のガイコツ〔簡略版〕を作ってほしい」
「なんだかブッソウな言い方ですね・・・何でガイコツなんですか」
「まだ頭と骨しかない状態、だからだよ。それも〔簡略版〕だ。あとから肉を足していくから問題ない。でも、ちゃんと肉を付けられるかどうかは、骨格がしっかりしてないとねえ」
具体的には、A4で1枚、次の内容を書いてきてほしい。

【第1の課題】10月上旬:「論文のガイコツ」〔簡略版〕
次の内容を含む、論文のガイコツをつくろう。
1.論文のタイトル(仮)
2.現時点での関心事項:箇条書きでよいので、どういうことに興味があるのかを書いてみよう。
3.論文の目的:どんな問いを、どんな仮説をたてて、どんな方法で答えようとするのかを、文章の形で、1段落分書いてみる。「仮説」がすぐに見つからないなら、「どういうことを検討したいのか」をその方法と共に書いてみよう。
4.構成案(アウトライン):章のレベルでかまわないので、だいたいの流れを書こう。見出し(+書きたいこと)、でよい。
5.資料・参考文献の状況:論文の目的やアウトラインを踏まえると、どんな資料が必要か、手元に集まっているかどうか
6.その他:先生や他の学生と相談したいことがあれば

「ひええ、あたし、できるかなあ・・・」
「あと2ヶ月あるからなんとかなるだろ。わかりました、とりあえずやってみます」
「まあ、これも、いきなり10月のゼミで報告するんじゃなくて、一旦相談しにきてもいいからね。9月下旬にはもう普段通り研究室にいるから」
「わかりました。あ、その前に9月上旬のゼミ合宿がありますね。そのときにも相談できるよう、がんばってみます」
「私も明日から合宿あるんで、帰ってきたら頑張ります!」
そうか、最後のチア合宿に出かけるんだね。
「卒論始まると行けなくなりそうなんで、楽しんできます!」
さっそく出かけるんだ・・・学生最後の夏休みだし、悔いの残らないようにね。

◇ぱうぜセンセのメモ◇

「はじめての論文」だからなあ、まだ恐ろしさを知らないなあ。自分がロースクールで論文書いたとき、指導教員の先生にめちゃくちゃ迷惑をかけたけど、こりゃあ見事にブーメランになりそうだ。大丈夫かなあ・・・。博論執筆時も、師匠に「スケルトンをさっさと書いて」と何度も言われたものだった。最初「なんじゃそりゃ」って顔してたら、「ガイコツだよガイコツ」って言われて、ああそうか、と思ったなあ。

編集後記

3月下旬(卒業式翌日)から体調不良で寝込んでしまい、卒論編が終わらないまま第2期生の卒論ができあがってしまいました(ですので、作中の時間は大きくずれています)。卒業シーズンにあわせて、今週は毎日更新します(そして、ついに卒業式がやってきます・・・!)。

なお、上述のスケジュールは、実際の横田ゼミ第1期生のスケジュールに準拠しています(文献調査中心、法政策提言型)。社会調査や実験が必要な場合はもっと前倒しでやらないとダメですので、まずはその研究室でのマイルストーンやスケジュールをよく先輩達に確認しておくことをお勧めします。

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