【前回のおさらい】ぱうぜセンセのお勧めに従って、まずは実際にログを取ってみた進吾くん。でも、どうしても長期計画の立て方がうまくいかない、ともう一度研究室を訪ねてきた。
“実際に長期計画を立てるときのコツは?”
立てるときのコツ、っていうのでは、またピントがずれているんだよな。よし、これは年始にむけて答えることにしよう。
(前回のお話はこちら)「SNSとの接し方は?」世界に開いた窓としての使い方
ログをとってみたけれど
そういえば、進吾くんたちにはすでに時間管理のやり方について話をしてあるよなあ。
「ええ、ぱうぜセンセのお勧めに従って、A5サイズのノートを買って、自分の時間の使い方ログを取ってみたっす」
ああ、ちゃんと覚えてくれていた。
「何時間勉強すればいい?」が”間違っている”ワケとは
時間管理の初歩の初歩です
「24時間、きちんと取ってみると、無駄な過ごし方をしている時間があるってことがわかって」
効果も出ていたみたいだ。
「ようやく、長期計画を立ててみよう!と思えるようになってみたんです」
ログをとったおかげで、勉強できる時間がどれだけあるか分かったんだね。それで、なんでまずいのかな。
「ようやく慣れてきた12月13日には、なんと勉強の時間を8時間取ることができたっす。だから、それを基準にして長期計画をたててみたんです」
あれれ、進吾くん、あなたさっき『無理のない計画を立てた』って言わなかったっけ。
「やってみたんですけど、うまくいかないんです・・・逆算方式は、漠然とはイメージつくのですが、実際に計画をたてると前半が無理目なスケジュールで、後半は何を具体的にしていいかわからず、理想としてはこんな状態にいたいという目標だけかがけて終わってしまいます。どうしたら、機能的な計画ができるんでしょうか。」
ええと、問題が二つあるな、少なくとも。
ばらつきがあって当たり前
「進吾くん、ログから計画を立ててみたのは良いけれど、やっぱり無理があるんじゃないかな?」
「そうですかね・・・俺、ちゃんとやれば8時間できるんだから、ちゃんとやること基準で考えないと、なまけちゃうっす」
「怠けているんじゃなくて、調子が悪かったり、突発的な用事が入ったとか、じゃないの?」
隣で黙って聞いていた明日香さんが、ここで一言はさんできた。
「あー、そういえば、こないだの金曜日って、『学科の先輩が飛び級でロースクールに合格したっ!』って、大騒ぎになったよね」
「そうそう、先輩のやり方も聞きたいから、急遽開催されたお祝い会に混ぜてもらったんだった」
先輩の実際の試行錯誤を聞くのも参考になるよね。
「そういう突発的なイベントの中にも、ただの『怠け』とは言えないものもあるし、どうしようもないものもあるよね」
「いきなり『再来週までにレポート出してね』っていう先生、嫌いです・・・たしかにシラバスに書いてあったけど、よりによってクリスマスイブ・・・」
まあ、教育的効果も考えているだろうから、そこはカンベンしてほしい・・・。
「こういう突発イベントって、ログ取っててもしょうがないんじゃないですか?」
そうでもないんだな、これが。
「まず、ログを取ることによって、そういう”突発イベントに振り回されることがあるんだ”という諦めはついたでしょ」
「・・・あ、前は確かに勉強時間のことまでは考えてなかったです」
「次にね、突発にみえることであっても、ログをとり続けていると、”いつ起きるかわからないけど回数や対応に掛かる時間はわかる”ということに気がつくこともある」
世の中には、赤ちゃんがどれくらいミルクをほしがるか等のパターンまで見積もった猛者がいます。そう、アシタノメンバーのはまさんです。
実はTaskChuteは育児にも役立つんですよ
育児では、赤ちゃんに合わせて行動することが多いため、行動のタイミングを選べずにストレスがたまりがちです。 しかし、タイミングがわからずとも、1日に行動を起こす回数ぐらいはわかります。回数がわかるという …
赤ちゃんの行動回数から時間を見積もるとは・・・
「そういうものも織り込んで、計画を立てるんだよ。この一日はとてもうまくいった、というのを基準にすると辛くなる」
「そーだよー、さすがにそれは無理がありますよね。体調が毎日良いとは限らないし」
「最低、1ヶ月は取らないとパターン見えてこないと思うよ。また、季節毎の周期もあるし」
実際、ぱうぜ自身は、毎月”まったく仕事にならない3日間”が必ずありますし、真夏の1週間くらいは無気力になることがここ数年のログからわかっています。そういうときは無理しないのが肝心。
「あらかじめ”たぶんこれくらいは調子悪いな”とか分かっていれば、余裕をもったスケジュールになるんですね」
定期的な見直しまでが「計画」だよ
「でも、余裕をもったスケジュールにしたら、慢心しちゃうんじゃないですか」
「ええと、君は計画を立てた後はどうしているのかな?」
「毎日ログとって、計画に対して遅れているのをみてうぐぐ、と思って、どうにか取り返そうと徹夜するんだけどやっぱり間に合わないっす・・・」
ログと計画の突き合わせ自体はしているんだね。
「それって、さっきの”オレ8時間できるヤツ!”ベースの計画でしょ?やっぱり無理があるんじゃない?」
「でも、終わらないと、不安で」
「最終的な目標はなんだっけ?」
「とりあえず、志望のロースクールに受かることっす」
ええと、予備試験とかもあるし、そもそも法曹で良いのかってところも本当は突っ込みたいところだけど、目標自体に突っ込みをいれるのは今日はやめとこう。
「ぱうぜセンセが言ってたように、ときどき、何のためにやっているのかを思い出すようにしてるっす。ノートに書き出して、対話してるんです」
それは感心。じゃあ、あと一歩だ。
「そのタイミングでさ、計画自体も見直してみようよ」
・・・。進吾くんがだまりこんで、ふるふる震えだした。
「でも、それじゃあ、自己管理ができないダメなヤツって認めているような気がして、うう・・・」
えっ?おどろいていると、進吾くんが言葉を続けた。
「最初に立てた通りにやれないってこと自体が、自分に負けた気がするんですよ」
・・・ほんとマジメだよなあ。
「いや、定期的な見直しまで込みで、”計画を立てる”ってことなんだよ。計画を立ててそれに向かって頑張るのはいい。しかし、それを押しつけてうまくいかなかったと凹んでばかりいたら、大きな目的からみたらマイナスだよ。立ててみた計画に縛られすぎるのも良くない。ときどき立ち止まって、現実に向き合おう。自分がどこまでできたか、冷静になって計画を修正する、あるいは、最初っから組み直すのも大事だよ」
・・・。進吾くんはまだ納得していない。結構プライド高いのかな。
「あー!センセの言いたいことわかりました!」
明日香さん、あなたほんとビックリするタイミングで口を挟むね。
「それって、『夏までに10kg痩せる!』っていってた友達が、『やっぱり秋の文化祭の発表までに2kg・・・』って、現実的な数字に直してなんとか衣装が入るまで痩せたのと同じですね!」
おいおい、それは正しいんだけど、たとえがダイエットか。それは、私への当てつけでしょうか明日香さん。
「そうですよね。おれ、体重計に毎日乗るところまでは出来ているんだから、あとは、健康的に痩せられる目標管理になっているのかどうか、定期的なタイミングで見直せってことですね」
そう、そうなんだけど・・・やばい、体重計に毎日乗っていないのがバレてるのか?(汗)
ブラウザで動くガントチャートを使ってみよう
「そうはいっても、やっぱり理想論にならないか不安です」
「一回書き出しちゃうと、修正がめんどくさいですもんね」
「それには、ガントチャートという工程管理のための仕組みを使うと簡単。実は、無料で使えて便利なサービスもある」
脱Excel!簡単かつ綺麗にガントチャート(スケジュール表)を作れるプロジェクト管理サービス「Brabio!」に恐れいった!しかも無料! | jMatsuzaki
使い方がわかりやすく紹介されています
「うわあ、これだと修正も簡単ですね」
「印刷しようと思ったらExcelの形式で取り出せるのか」
「修正が頻繁に入ることが分かっているデータなら、紙でやるよりデジタルでやるほうが簡単だよね。これは今まで面倒くさかった部分を全部自動でやってくれるから、試してみるといいよ」
「でも、最初からこれでやるとうまくいかないかも・・・」
「まあ、全てを完璧にしようとしなくていいんだ。まずは、できるところから、やれることからやってみよう」
過去の経験にも学んでみよう
たぶん、この二人は忘れていることがあるな。
「長期計画を立てること自体に不安を感じているなら、過去の自分に学ぶといい」
「え、どういうことですか?」
「勉強でも、遊びでも、サークルでも、部活でも、なんでもいいから、『計画をもって試したこと』はないかな?」
「あ、合宿のリーダーをやったことがあるっす」
「高校受験のときは塾でいろいろとスケジュールとかもらいました」
やっぱり。受験にしろ部活の大会にしろ課外活動にしろ、何らかの形でやったことはあるもんだ。
「そういう経験から、学べることもあるはずだよ」
「そういや、事前にちゃんと確認しておかなかったせいで、バスの座席が足りなくて大変でした」
「塾の先生は、『自分がどのタイミングで勉強が進むかをメモしておけ』っていってました」
全ての経験をつなげて考えてみることも必要だよね。
メモやノートと仲良くなろう
「そういえば、このノートには時間のログだけじゃなくていろいろ書いてるなあ」
進吾くんがそうつぶやいた。
「実は、まだノートもメモもなんだか面倒くさくて続いていないんだけど、面白いかなあ?」
あれれ、明日香さんにはまだ楽しさが伝わっていないようだ。
「それじゃあ、それも質問だね」
「はい。今回は、ぱうぜセンセだけじゃなくて、進吾くんにも質問です」
メモ・ノートって大事なの?楽しいの?
楽しみ方、いろいろあるんだよね。
「うん、今度の質問は俺にまかせてほしいっす、ぱうぜセンセ」
お、進吾くんがやる気なので、まずは語ってもらおうっと。
◇ぱうぜセンセのメモ◇自分の経験から学んだことがもっとも身につきます
質問に毎回答えているけど、ここでの答えも結局は自分の試行錯誤から出たものなんだよねえ。ここで「へえ、そうなんだ」と思ったら、ぜひ自分で試してみて欲しいんだよなあ。ログと計画といったりきたりすることで、そこからみえてくるものがある。それを信じて、まずはやってみて、そして時々立ち止まって考え直せばいいんじゃないかな。
ん、そういえば、「体重計に毎日乗る」っていうログ取り、授業開始後の忙しさにかまけて忘れていた。こ、コワい・・・でも、現実に向き合えって進吾くんに言っちゃったし、また再開しよう・・・。
編集後記
今回はask.fmからいただいた質問でしたので、質問者の頭の中を想像するのに時間がかかりました。匿名で質問できる、それを受けることができるのはいいんですけど、対話の中で焦点を合わせていくスタイルとしてはなかなか大変ですね。質問をくださった方、これでお答えになりましたでしょうか?
ぱうぜセンセのコメントボックスでは「バーチャルコメントボックス」を設けております。Twitterで #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。いただいた全ての質問にお答えできるか分かりませんが、とりあえず試してみることにします。似たような仕組みとして「ビストロ・アシタノ」もありますが、ビストロはアシタノメンバーみんなで答える形式になります。どうぞ両方ご愛顧ください。

2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/