普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ(連載を始めるにあたって)

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アシタノレシピ読者の皆様へ。

はじめまして。彩郎(いろどろう)といいます。「単純作業に心を込めて」というブログをしています。

この2016年4月から、ここアシタノレシピで文章を書かせていただくこととなりました。隔週火曜日担当です。よろしくお願いいたします。

さて、第1回の今回は、1回分まるまる費やして、自己紹介をさせてください。[2016年4月現在の自己紹介]と[2012年2月~3月当時の自己紹介]です。この2時点の私のことをお話しすることを通じて、これからこのアシタノレシピで書いていきたいことのイメージを描いてみます。

[2016年4月現在の自己紹介]

■持続可能な毎日を送り続ける

2016年4月現在、私は、30代のワーキングパパです。

妻と子どもと一緒に愛知県で暮らしています。我が家は共働きの子育て家庭なので、私は、妻と一緒に、毎日せっせと、家事と育児に励んでいます。

私が働いているのは、小さな組織です。仕事の内容は、主に文書作成や物事の段取り調整で、どきどき研修の講師をしたり、大学で学生に講義をしたりすることもあります。

この家庭と仕事という2つの役割は、楽ではありません。でも、どちらも「120%の力を出し尽くさないと維持できない」というほどではありません。私が自分の人生に求めるのは、「持続可能な毎日を送り続ける」ということなのですが、今の私は、幸運なことに、大筋で、家庭と仕事において「持続可能な毎日を送り続ける」ことができています。

■「単純作業に心を込めて」と「彩郎」

今の私が担っている主な社会的役割は、主に家庭と仕事なのですが、でも、これらとは独立に、私はウェブの中でも生息しています。それが「単純作業に心を込めて」と「彩郎」です。

単純作業に心を込めて」は、私のブログです。

私にとって、「単純作業に心を込めて」を、物事を考えるための研究室のような、試行錯誤するための実験場のような、そんな存在です。

「単純作業に心を込めて」には、(9つしかありませんが、)十戒があります。

  • (1) 作品未満のものを出さない
  • (2) 結論に至る道筋を辿れない文章は書かない
  • (3) 自分の問いが存在しない文章は書かない
  • (4) ブログのためだけの試行錯誤はしない
  • (5) Googleだけで完結した試行錯誤は書かない
  • (6) 自分のエゴを守るための文章は書かない
  • (7) 違和感を感じた指標をゲームのルールに残しておかない
  • (8) 実名は出さない
  • (9) 狙いのないデザイン変更はしない

こんな「単純作業に心を込めて」の十戒に従って、私は「単純作業に心を込めて」を育ててきました。

「彩郎」は、ブログのために生み出した人格です。主にTwitterで生息しています。

彩郎(@irodraw) | Twitter

十戒の8つめにも書いたように、私は「単純作業に心を込めて」を匿名でやっています。でも、しばらく続けているうちに、何らかの人格が欲しくなったため、この人格を生み出しました。

(ちなみに、「彩郎」は、「いろどろう」と読みます。「彩ろう!」で「いろどろう」です。できのよくないダジャレなのですが、「単純作業に心を込めて」というタイトルの源流のひとつがMr.Childrenの『彩り』なので、「彩り」という言葉を入れたくて、「彩郎」という名を選びました。)

最初は「単純作業に心を込めて」の更新情報を流したり、他のブログ記事を共有したりするだけの存在だった「彩郎」ですが、いろんな方々と交流を通して少しずつ育ち、今では、たくさんの方との豊かな関係に恵まれています。

■とりあえずWorkFlowy

2016年4月現在、私は、WorkFlowyというクラウドサービスを偏愛しています。

WorkFlowyは、テキストを階層構造で管理できるシンプルなクラウドサービスです。WorkFlowyを本格的に使い始めたのは2015年1月なのですが、私はあっという間にWorkFlowyにハマり、以後、WorkFlowyのことばかりを書き続けてきました。WorkFlowyについて書いた「単純作業に心を込めて」の記事の数は、1年間で100を軽く超えます。

WorkFlowyについて書いてきた177個のブログ記事を、WorkFlowyによって組み替えた、ひとつの大きな階層つきリスト

この過程から、いくつかのことがついてきました。

まず、WorkFlowyの本を書きました。『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』です。

次に、WorkFlowyのためのアプリ開発に関わることができました。2015年12月リリースのMemoFlowyというメモアプリと、2016年2月リリースのHandyFlowyというWorkFlowyクライアントアプリです。

そしてなにより、WorkFlowyやアウトライナーのことを意見交換し合える場所にいることができています。コミュニティといってもよいかもしれません。

日本のWorkFlowyコミュニティと、「好き」な対象に「人生をうずめる」こと

このように、今の私は、家庭と仕事を生きるのと同時に、「彩郎」として、WorkFlowyという大好きなことに没頭しながら、生きています。

[2012年2月~3月当時の自己紹介]

■閉塞感のある平和な毎日

さて、4年ほど時計の針を戻して、2012年2月当時の私のことをお話させてください。

現実社会における基本的な情報としては、2012年2月当時も、今と変わりません。

今と同じように、妻と子どもと一緒に、愛知県で暮らしていました。

今と同じように、小さな組織で、文書を作成したり物事の調整をしたり、講演をしたり、大学で講義をしたりして、働いていました。

そして、今と同じように、「持続可能な毎日を送り続ける」ことを大切にしていました。大きく見れば「持続可能な毎日を送り続ける」ことができていましたし、「無理をしなければ、これからも、「持続可能な毎日を送り続ける」ことができるんじゃないか」と考えていました。

表面上、たいした問題は見当たりません。幸せで恵まれているといっても自己欺瞞ではないと思います。平穏で平和な毎日でした。

ところが、当時の私は、もやもやとした感覚を抱いていました。

このもやもやは、一言でいえば、「何かが足りない」だったのですが、問題は、何が足りないのかが自分でもよくわからないことでした。「何か解消すべき問題点があるのか?」と自分に問いかけても、具体的で明確な問題点が出てきません。

もちろん、具体的で明確な問題点が見当たらないこと自体は、とても幸せなことです。でも、逆に言えば、解消すべき課題がよくわからないということでもあります。労働時間を減らせばなんとかなるわけでもなく、子どもの夜泣きがなくなればなんとかなるわけでもなく、収入が倍増すればなんとかなるわけでもなく、体の不調が消えればなんとかなるわけでもなく、どんな課題を解消すればこの閉塞感が消えるかの道筋が、全然見えませんでした。

当時の私が送っていたのは、こんな、仕事にも家庭にも具体的な問題点が見当たらないのに、もやもやは消えないという、閉塞感のある平和な毎日だったのです。

■『みんなのイチ押しブログ選手権』

ちょうどそのころ、アシタノレシピの『みんなのイチ押しブログ選手権』が始まりました。

あなたの「推しブログ」を教えて下さいー『みんなのイチ推しブログ選手権』開催します! #oshi_blog

アシタノレシピを購読していたこともあり、企画の期間中、私は、この企画に参加しているたくさんのブログの記事を読み続けました。

そこに広がっていたのは、私の知らない世界でした。いろいろな人が、いろいろなテーマについて、いろいろなことを、いろいろなスタイルで、一様にとても楽しそうに、表現していました。

なんだかワクワクするものを感じました。「楽しそう」と思いました。そして、「自分もブログをやってみようかな」と思いました。

ブログに関する何らかのビジョンがあったわけではありません。

達成したい目的があったわけでもなく、中期目標も短期目標も見えませんでした。そもそも、自分にブログを続けることができるかどうかすら、全然自信がありませんでした。

ブログを始めることに、何らかの勝算があったわけでもありません。

金銭的な対価を得られる見込みがあったわけでもなく、人気ブログへの道筋が見えていたわけでもありません。

でも、ブログを始めることには、リスクが見当たりませんでした。

ノルマがあるわけではありませんので、自分の能力や環境に応じて、無理のないペースでやっていくことができます。無理しなければ、家庭や仕事の制約となることもありません。匿名でやれば、実生活には大した影響もありません。恥ずかしくもなければ、後ろ指も刺されません。続けられずに途中でやめてしまったとしても、何かを失うわけではありません。(費やした時間は戻ってきませんが、それはそれで面白い経験値は得られそうです。)

うまくいったら儲けものだし、失敗しても失うものはない。最低限、ブログをしてみたという経験は得られる。ブログというものに、なんだかワクワクするものを感じているのは、まちがいない。だったら、とりあえず始めてみたらいいじゃないかと、私は思いました。

こうして私は、2012年3月にブログ「単純作業に心を込めて」を始めました。

そして、それからいろいろあって、2016年4月の今に至ります。

[普通の個人が、ブログのある毎日を送り続けるということ]

長い長い自己紹介をここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。ここまできてようやく、このアシタノレシピで書きたいことにつながります。

ここで私が書きたいのは、この「それからいろいろあって」のところです。閉塞感のある平和な毎日から、今に至るまでに起きたことを、ひとつずつふり返り、一連の文章として書いていきたいと思います。

私の「それからいろいろあって」は、私の個人的な体験談です。

今、私は、自分がいるこの場所を、けっこうおもしろいところだと感じています。とりわけ、「単純作業に心を込めて」と「彩郎」を中心に、WorkFlowyのことを考えたり、WorkFlowyの本を書いたり、WorkFlowyのアプリを作ったり、WorkFlowyのコミュニティと関わったりする毎日は、とても刺激的で、閉塞感のかけらも見当たりません。金銭的な対価はほとんどありませんが、それを補ってあまりあるいろんなものを、日々、この場所から与えられ続けています。

私が今、こんな場所にいられることには、たくさんの要因があります。幸運もあります。でも、これらたくさんの要因や幸運を遡っていくと、はじまりの場所は、閉塞感のある平和な毎日の中でブログを始めた2012年2月〜3月に行き着きます。ブログを始めたことで、それからいろいろあって、この場所まで来ることができました。

だから、私の「それからいろいろあって」は、ほとんどそのまま、私個人のブログ「単純作業に心を込めて」に関する体験談です。

でも、私が書きたいのは、こんな個人的で主観的な体験談そのものではありません。

そうではなくて私が企んでいるのは、私個人の主観的な体験談を題材にして、「普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける」という、もう少し一般的なテーマを考えてみることです。

そこで、次回以降、

  • 私個人の主観的な体験談を書き、
  • 私個人の主観的な体験談を題材にして、少し一般的な観点から考えてみる

というくり返しを積み重ねながら、「それからいろいろあって」のところを書いていきます。

  • 普通の個人が、ブログのある毎日を送り続けることに、どんな意味があるのか?
  • 普通の個人にとって、ブログとは、どんな可能性をもつ存在なのか?

誰にとってどんな実益があるのか、よくわからないテーマです。少なくとも即効性はありません。

でも、(私が『みんなのイチ押しブログ選手権』に感じたように、)ブログというものに対する何かワクワクしたものを感じていただけたなら、そして、「自分もブログをやってみようかな」と感じていただけたなら、とてもうれしく思います。

—編集後記—

第1回の記事を形にすることができて、ほっとしています。

自分のブログではない場所に記事を書くのは、これがはじめての経験です。隔週火曜日担当という投稿のペースが与件として定まっているという基本的な枠組み自体、(投稿ペースが全然決まっていない自分のブログのために文章を書くのとは、)ずいぶんと勝手がちがいます。こんなちがいも、ブログというものの懐の深さなのかもしれません。

何はともあれ、この新しい経験がつながっていくその先にワクワクしながら、ひとつひとつの記事を、一生懸命書き続けていきたいと思います。

次回は、2週間後の予定です。またそのときにお目にかかりましょう。

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