ブログ「単純作業に心を込めて」にとって、WorkFlowyは、どんな存在なのか?(普通の個人が、ブログのある毎日を送り続ける、ということ)

こんにちは。「単純作業に心を込めて」の彩郎です。

前回は、彩郎という分人がウェブ上に育ってきた経緯を紹介しました。

彩郎という分人を語る上で欠かせないのは、WorkFlowyです。

WorkFlowy – Organize your brain.

WorkFlowyは、階層構造でテキストデータを管理できるクラウドサービスです。

WorkFlowyの丁寧な説明

私は、2015年1月にWorkFlowyを本格的に使い始め、あっという間にはまり、以後、毎日使い倒しています。それに伴い、ブログ「単純作業に心を込めて」のエントリは大部分がWorkFlowyになりましたし、Twitterの@irodrawがつぶやく内容も、ほとんどがWorkFlowyに関係します。これらは、「とりあえずWorkFlowy」ともいうべきレベルです。

しかし、この「とりあえずWorkFlowy」は、今の「単純作業に心を込めて」というブログを考える上で、確かな役割を果たしてきました。

そこで、今回は、「WorkFlowy」という具体的な対象と出会ったことが、ブログにとってどんな意味を持っていたかを、考えてみます。

【WorkFlowyとブログとの関係】

ブログ「単純作業に心を込めて」は、「とりあえずWorkFlowy」戦略を掲げています。

「とりあえずWorkFlowy」戦略については、ここに書きました。

「とりあえずWorkFlowy」から受け取ったもの

また、「とりあえずWorkFlowy」戦略が、時間軸でどのように展開してきたかについては、ここに整理しました。

「とりあえずWorkFlowy」の2015年

以上を踏まえて、以下では、ブログとの関係に絞って、3つのポイントをお話しします。

(1) WorkFlowyを使い始めたことと、ブログ

ひとつめ。

そもそも、私がWorkFlowyを使い始めたきっかけは、ブログにあります。ブログ「単純作業に心を込めて」(と彩郎)が、私をWorkFlowyへと引き寄せてくれました。

まず、WorkFlowyという存在を知ったのは、Tak.さんによる次の記事に由来します。

WorkFlowyとOmniOutlinerを比較する:Word Piece >>by Tak.:So-netブログ

Tak.さんの存在を知ったのは、ブログでEvernoteのことを考える過程で、次の記事を読んだことがきっかけです。

アウトライナー・フリーク的Evernote論:Word Piece >>by Tak.:So-netブログ

次に、WorkFlowyのアカウントを作ったのも、Tak.さんがきっかけでした。

「項目番号がアウトライナーになるから、アウトライナーを使う必要はない」という感じのこの記事(項目番号はアウトライナーになる(項目番号によって文章の構造を組み立てる))に対して、Tak.さんから次のようなコメントをいただいたためです。

さらに、私がWorkFlowyを本格的に使ってみることを決意したのは、ブログを通じて知り合った信頼しているたくさんの方々が、皆さんそろってWorkFlowyを高評価していたためでした。

WorkFlowyで「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」を育てる

このように、WorkFlowyを使い始めたそもそものきっかけ自体、すべてブログに由来しています。

(2) WorkFlowyの細かい挙動を検証したことと、ブログ

ふたつめ。

私は、WorkFlowyの細かな挙動を、ひとつひとつ自分の手で試して検証し、整理しました。この一連のブログ記事を、私自身、「自分の仕事」として肯定的に評価しているのですが、ブログがなければ、こんなことをやってみようとすら思わなかったはずです。

WorkFlowyは、とても使いやすく、すぐに使えるサービスです。ある程度パソコンに慣れている人なら、1時間触ればそれほどの不自由を感じることなく使えるでしょうし、数日間集中的に触れば、ショートカットキー含め、思い通りに使いこなすことができるかと思います。

だから、ふつうに使う分には、細かい挙動をひとつひとつ検証するなんてことは、まったく合理的ではありません。実際、WorkFlowyの細かな挙動を自分の手で検証してみた人は、あんまりいないのではないかと思います。

ところが、実際にやってみると、この作業には、確かなメリットがあります。もちろん、WorkFlowyは、すぐに8割方使いこなせるにようになるツールですので、細かな挙動を整理することによって改善できるのは、よく見ても1割くらいのものです。でも、この1割程度の違いが、WorkFlowyを使う上での違和感を、確実に減らします。結果、WorkFlowyは、よりいっそう、自分の手に馴染む道具になるわけです。

ということで、私は、この作業をやってみて本当に良かったなと思っているのですが、それなりの時間を費やしてこの作業を実行できたのは、ブログがあったからこそだと思います。検証した内容を整理してブログ記事にする、という目標があったからこそ、ときに面倒くさく感じながらも、一通りの作業を終えることができました。

※WorkFlowyの細かな挙動を整理した一連の仕事については、次のところに整理しました。

私が、WorkFlowyの基本機能を淡々と説明する、という「自分の仕事」をすることができたのは、ブログのおかげです。

(3) WorkFlowyについての2つの具体的な作品と、ブログ

みっつめ。

2015年1月から始まった私のWorkFlowyへの愛用は、2種類の具体的な「作品」へとつながりました。

ひとつが『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』という本の出版で、もうひとつがHandyFlowy&MemoFlowyというWorkFlowy用アプリです。

まず、『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』という本を出版することができました。

次に、開発チームの一員として、2015年12月3日にMemoFlowyをリリースし、2016年2月16日にHandyFlowyをリリースしました。

これらいずれの作品も、単にWorkFlowyを愛用しているだけでなく、ブログでWorkFlowyのことを書き続けていたからこそ、形にできたものだと思います。

とりわけ、MemoFlowy&HandyFlowyは、ブログを続けることによって世界に価値を追加する、ということに関する、幸運な一例であり、面白い実例だと自負しています。

【WorkFlowyという具体的な対象と出会ったことで】

WorkFlowyは、ブログ「単純作業に心を込めて」にとって、具体的な対象です。WorkFlowyという具体的な対象と出会えたことには、少なくとも2つの意味がありました。

(1) 具体的な価値を見い出してもらいやすい、具体的な情報を提供できた

ひとつめは、具体的な情報を提供できるようになったことです。

私は、抽象的でおおげさな理屈が大好きです。「個人にとって知的生産が果たす役割」とか、「自分の好きなことを言葉で表現することの意味」とか、そういうことを考え、書くのが、とても好きです。

でも、こういったテーマは、ともすると、ふわっとしてしまい、空中にプカプカと浮かぶお花畑のようになります。書いている方(=私)は気持ちがよいんだけれど、読んでいる方(=読み手)は、なんとなくきれいなことが書かれていることはわかるけれど、率直に言ってよくわからない、みたいなことになりがちです。いわゆるポエムというやつでしょうか。

ポエムは、読み手にとっては、あまり役に立ちませんし、それほど面白くもありません。つまり、誰からも価値を見い出してもらうことができません。だから、どれほど一生懸命書いたとしても、客観的な価値を生み出さない記事となってしまいます。

これに対して、WorkFlowyは、具体的なサービスです。Enterキーを押すとどんな反応が返ってくるかとか、検索画面においてできることとできないこととか、URLの生成ルールとかは、極めて具体的な情報です。

これらの情報は、ひとつひとつの射程範囲はそれほど広くないかもしれませんが、それらの情報を必要とする誰かから見つけてもらえれば、確実な価値を見い出してもらうことができます。WorkFlowyだからこそ、そんないわば地味な作業を、心から楽しんで続けることができました。

「単純作業に心を込めて」は、それなりに長い間続いていて、それなりの個数の記事を持っています。それでも今もポエム一辺倒になることを免れている大きな理由が、WorkFlowyという具体的な対象と出会えたことです。

(2) 具体的な対象を語ることで、抽象的な世界観のようなものを表現できた

ふたつめは、一見逆方向の話なのですが、WorkFlowyという具体的な対象について語ることによって、抽象的な世界観のようなものを、よりうまく表現できるようになった気がする、ということです。

「抽象的でおおげさな理屈が大好き」という私の傾向は、ブログを始めるよりも前からのものです。だから私は、当初から、わりと一貫して、抽象的でおおげさなことを継続的にブログに書こうとしてきました。

でも、抽象的でおおげさな理屈をうまく書くのは、なかなか難しいことです。とりわけ、独りよがりではない論理を備えた形で表現するのは、至難の業だと思います。

ところが、WorkFlowyという具体的な対象と出会い、WorkFlowyに関する具体的な情報を書くようになって少し経った頃、私は、自分が書きたいと思ってきた、抽象的でおおげさな理屈のことを、わりとうまく表現できている自分に気づきました。

おそらくそれは、WorkFlowyという具体的な対象について語ることによって、WorkFlowyのことだけではない、抽象的でおおげさなことを表現できているからだと思います。

たとえば、個人にとっての知的生産のあり方を、私は、「ずっと完成しないで変化し続ける有機体から暫定的な作品群を切り出し、継続的に公開する」というようなイメージで捉えています。これだけだと抽象的でおおげさなのですが、しかし、WorkFlowyという具体的な対象によって、このイメージは、

  • WorkFlowyで大量の書きかけの文章群を管理するための具体的なトピック構造
  • WorkFlowyからエクスポートしたOPMLをHTMLに変換するツールであるハサミスクリプト

という具体的な情報になります。

また、たとえば、私は、個人が知的生産のある生活を送るためには、「自分の道具」をカスタマイズし、「自分のシステム」を構築することが大切だと考えているのですが、これも、これだけだと、抽象的でおおげさです。しかし、これも、WorkFlowyがあれば、

  • 「WorkFlowy専用Firefox」
  • WorkFlowyのURL、WorkFlowy検索、差分メール、Dropboxバックアップ

といった具体的な情報として、表現できます。

このように、WorkFlowyという、シンプルでありながら懐の深い対象と出会えたことによって、私は、WorkFlowyのことを語ることで、WorkFlowyのことではない、本当に自分が表現したい何かを、語ることができるようになりました。

WorkFlowyについて語るときに僕の語ること

これも、WorkFlowyという具体的な対象と出会えたことが、ブログにとって果たした大きな意味だと考えています。

—編集後記—

今回は、WorkFlowyという具体的な対象と出会えたことが、ブログ「単純作業に心を込めて」にとって、どんな意味を持っていたかをふり返りました。

文中でもすこし触れたHandyFlowy&MemoFlowyは、誕生のきっかけとなった1通のメールから、明日でちょうど1年です。1年前は卵ですらなかった存在が、今や、WorkFlowyをスマートフォンから使うための定番アプリとなったのではないかと思います。多くのユーザーの皆様にご愛用いただいているおかげです。今後も、HandyFlowy&MemoFlowyをよろしくお願いします。

今回も書いたとおり、WorkFlowyという具体的な対象との出会いは、ブログ「単純作業に心を込めて」にとって、とても幸運な出会いでした。

次回は、私が経験したことを多少一般化し、幸運にして、自分を賭けたいと思えるような具体的な対象と出会えた場合に、どのような方針でブログを運営するのがよいか、どんな記事をどんなスタンスで書くとよいか、ということを、若干、戦略っぽく、考えてみます。

2週間後にまたお目にかかれたら嬉しいです。

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