やることいっぱいどうしよう?その2:キャパシティを広げるには

ぱうぜセンセのコメントボックス

【前回のおさらい】「やることいっぱいでどうしよう・・・」思った以上に忙しい学生生活に音を上げた学部1年生のさくらさんとつばきさん。ぱうぜセンセは「下ごしらえ」と「3つの方策」を教えようとしています。時間切れで「また来週ね」と分かれて、一週間後・・・

「やることいっぱいどうしよう?」

大学生のタスク管理編、つづきます。


(前回のお話はこちら)やることいっぱいどうしよう?!その1:下ごしらえと3つの方策

「下ごしらえ」をやってみると

「センセ、先週の続きを聞かせてください」
さくらさんとつばきさんと・・・あれ、映二くんも来たんだね。
「なんかさくらさんたちが、基礎ゼミの続きっぽいことをぱうぜセンセに聞いてるって言うんで、僕も一緒にきかせてもらいたいなあと」
「こないだの話は映二くんにも伝えたので、ぜひ続きをお願いします」
「わかりました。とりあえず、内容を覚えているか確認しようか」
「ええ。まず【タスク管理の下ごしらえは、やりたいこと、やるべきことを全部書き出してみること】でしたね」
「それで、結構時間掛かると思うんだけど、やってみたかな?」
「はい。こんなのでどうにかなるとは思えないんですけど、だまされたとおもってやってみました」
さくらさんは素直だなあ・・・まあ、確かに「とりあえずやってみて」とは言ったけれども。
「それじゃあ、せっかくなので、みんなでどういうことに気がつくか見てみようか」
一応念のため、他の人にみせたくない内容は伏せてもらったうえで、お互いにみせあいっこをしてもらうこと数分。
「あれぇ、結構時間掛けてやったつもりなんだけど、お互い足りないところがあるね」
「そうか、映二くんは結構家事を手伝ってるんだね。『こたつ布団をクリーニング屋さんに取りに行く』があるとは思わなかったなあ」
「実家生だからちょっとは手伝わないと。ほら、あれ重たくて大きいから母には手に余るし」
「季節の準備とか、家事とか、すっかり忘れてたなあ・・・」
「そのかわり、さくらさんは将来のことも考えて、毎朝英語と中国語を頑張ってるなんてすごいじゃないか」
「えへへ・・・でも、これでいいのかなあとか見直そうと思ってて」
色々あるねえ。
「お互いのをみていて、書き足したくなってきちゃいました」
「結構見落としが・・・。どうしたらいいですか?」
「うーん、『思い出すためのトリガー』をつくってみるといいかもね」
「トリガー?どういうことですか?」
自分がどういう役割を担っているのかとか、将来のことを考えるとこういうことを考えておくべきとか、そういうのをくりかえし使えるようにリストにしておくんだよ」
「ああ、それを見ながら『そろそろアレをやらないとなあ』とか思えば良いんですね」
「ネット上には既にそれを作って公開している人もいるけど、まあ、学生は学生なりにお互いのタスクの裏にはどういうトリガーがあるのかを確認してみるといいんじゃないかな」
「市販の本とかだと、社会人向けだったりしますもんね」
「そうそう。市販の本には、たぶん『サークルのイベント』とか『定期試験』とか・・・は無いよね」
「それじゃあ、とりあえず今日はお互いにみて気になったところを足してみます」
「あっ・・・」
あれ、急につばきさんが慌てだした。
「センセ、タスクがなくなるどころか増えていく一方です、どうするんですかこれ」
まあまあ慌てなさるな。3つの方策を考えていこう。
「まあ、下ごしらえはこれくらいにして、一つづつ方策についてしゃべろうかな」

第1の方策:キャパシティを広げる

「それじゃあ確認だけど、映二くん、前回あたしが言った3つの方策って何か、きいたかな?」
「はい。1つめは『キャパシティ』を広げてしまうこと、2つめは、やりたいことに優先順位を付けること、そして3つめは、『どうせやるなら二毛作』ということなんですが」
そうそう。
「キャパシティ?二毛作?」
さくらさんはしきりに首をひねっている。
「まあ、ひとつづつ話そう。一つ目は、自分のキャパシティ拡張、つまり、『やれることを増やそう』ってことだったんだけど・・・さて、キャパシティ拡張の例として前回あげたのは」
「パソコンをブラインドタッチで打てるようになると、いろいろ使えるっていう話でしたね」
「その話を聞いて、僕は嬉しかったです。最初のバイト代で買ったの、パソコンだったんですよ」
おお、映二くんは先んじてやってたんだね。
「レポートをパソコンで書いたときに、どんどん使ってみたいなあと思って、なんとか買いました」
「そうだそうだ、その話を聞いてから後で考えたんですけど、ぱうぜセンセって他にどんなことができるんですか?」
えええ?ここで逆質問か。
「ぱうぜセンセが『高校卒業のときには出来なかったけど大学生活のうちに出来るようになって、今はよく使ってること』っていうのがあれば教えてください」
うーん、えーと、そうだなあ・・・
「まず、法律の論文を含めて、情報処理のスピードと質が上がったね。学生のときは最初から専門書バリバリ読めたわけじゃないし」
「それは法学部でロースクールに行って・・・そりゃあそうですね。他には?」
「ええと、対人接客スキル?これは食事会企画したりとか、実際に司会したりとか、バイト先での観察も含めて、かな。あと、英語サークルで外国人の観光ガイドやったりしたし」
「ううーんと、もう一声!」
なんだこの流れ・・・洗いざらいしゃべる流れか。
「ああ、ドイツ語、高校で一応やってたんだけど、ちゃんと『使える』レベルの入口に立ったのは博士課程の途中からだね」
「えっ、高校からやってて学部1,2年のときにもドイツ語クラスなのに・・・?」
「うん。学部1,2年のときは、まさかドイツ語の論文読んで翻訳して分析するなんて仕事につくとは思ってなかったからね、どうにか良い単位をゲットすることしか考えてなかった」
「あと、僕からみると長いブログが書けるってある意味特殊スキルだと思うんですけど、これはいつ頃?」
「ああ、これはね、学部4年生のときにブログをはじめたんだけど、当時はまだTwitterとか無かったから、日常の日記を垂れ流・・・じゃない、勉強や買った本の記録とか、バイトで辛いよーとか、そういうのを毎日書いていたんだ」
「センセ、もしかして暇だった・・・?」
「いや、途中からなんか閲覧者が増えてったんで、『ブログネタのために勉強する、そして睡眠不足で倒れそうになる』っていうよく分からない状況になったことすらあるよ」
いや、ほんと、当時のブログ、いまより勉強してるんじゃないかって思うこともある記事がときどき・・・
「その一方でレシピとかアップしたり、かと思えばバイトのつらさとか『このアニメが面白すぎる』とかまで書いてある」
まあ見ればわかるんですけど、いわゆる黒歴史もありますね。
(今は再公開してるけど、リンクは貼りません。適宜お探しください)
「・・・ふうん、センセ、いろんなことしてたんですね」

自分の”普通”を押し上げる

「すごいなあ、出来る気がしないなあ・・・」
「まあ、誰だってすぐに出来るわけじゃないよ。ちょっとづつ、ちょっとづつ、『自分の”普通”を押し上げていく』んだ」
「どういうことですか?」
「最初は誰だってできない。でも、『こういう風なことが出来るようになれたらいいな』っていう人に会ったり、本で読んだりする。つまづきながらも、少しできるようになる。もし他の人も興味がありそうなら、人に教えたりもする。そういう流れに乗れたら、少しづつだけど、自分ができることの量や幅が増えていくんだ」
「上達のコツとかありますか?」
「うーん、そうだねえ、『使う場面と目的・必要性』がわかったものは習熟が早くなるよ。単に『グローバル化対応のために英語と中国語勉強しなきゃ!』っていうのではなくて、『中華料理店の○○さんと話したいから』とか、『好きな小説を原語で読んでみたい!』とか、何かの目的や必要性に迫られれば、少なくともその範囲では対応ができるようになっていくから、徐々にその経験を他にも応用していけばいいんだ」
「さっきのドイツ語とかそうですか」
「そうそう。まさかね、あんな精読の力と(分野限定だけど)速読の力をドイツ語で書かれた論文を読むために使うことになるなんて、思ってもみなかった。でも、博論のテーマがある程度見えてきてからは、『どうしてもこの文脈の議論の詳細が知りたい』とか、『この文献の要旨をとりあえずつかんで研究計画上のどこに位置づけられるのか師匠に報告しなきゃ』とか、現実の必要に迫られてからは、どうにかこうにか読めるようになってきたんだ」

他人にお願いするときにも

「それにしても、『使えること』っていう質問に対する答えとしては意外なものもありますね」
「『英語が使える』じゃなくて、『対人接客スキル』ときましたか」
「うん。英語サークルでやったのはボランティアの観光ガイドだったけど、そのあとウエイトレスのバイトをして、それでさらに研究会で外国の先生がいらっしゃったときのお手伝いとかをしているうちに、どうおもてなしをするのかがだんだんわかってきたというかなんというか」
「それをまさか大学の先生から聞くとは思わなかったです・・・」
「でもねえ、これが出来るようになったおかげで、『~~さんが来るんだったらこういうことを気をつけよう』っていうのがわかるから、場合によっては人にお願いするときに気をつけておいたりとか、いろいろ気が回せるんだよ」
「人にお願いするっていうことも良くあるんですか」
「うん、だんだん後輩ができてきたからね、お任せすることもあるよ、研究会後の懇親会の予約とか」
「他に出来る人がいるなら、そうやって自分のやることを減らせばいいんですね」
あ、ちょっと勘違いしてるかもしれない。
「他に出来る人、っていうのは最初から居るわけじゃないんだよ。まだ皆さんは想像がつかないかもしれないけど、『他人に任せる』っていうのは大変なことなんだ。その人のできることにかなっているかどうか、キャパシティオーバーになっていないかを気をつけないといけない」
「あー、とくに後輩だとそうですよね」
「先輩だからといって安心できるとは限らない。人によって向き不向きがあるからね。やり方だって人によって違う。後輩でも自分よりも良く出来るかもしれないし。いずれにしても、自分ができることを他人にお願いするっていうのは勇気が要るんだ。何でも自分でやっているウチはいつまでも自分の仕事は減らない。お任せした以上はある程度相手に任せるべきだ。とはいえ、投げ出したくなるような困り方をしないように手助けしたり、大失敗しないように見守るっていうことも時には大事なんだ」
「ああ、『他人の”普通”を押し上げる手助けをする』んですね」
「うん、結局は本人が頑張ってもらうしか方法はないんだけど、少しヒントを出せば避けられることとか、初見じゃぜんぜん気がつかないような落とし穴は一緒に乗り越えたほうがいいかもね」

まだまだ話はつきない。ああ、コーヒーを淹れて一息つこう。

◇映二くんのメモ◇

「思い出すためのリスト」っておもしろいなあ。大学生バージョンのトリガーリスト、作ってみようかな?
あと、ぱうぜセンセってあんまり研究者っぽくない(失礼かな)んだけど、ドイツ語の話とか聞くとやっぱそうなんだなあ・・・。
いまやってるいろんな事って、10年後の自分につながってたりするのかな?

編集後記

大学生のタスク管理編第2回です。
ちょっとマッチョな話(「出来ないなら出来るようになれば良いじゃない」)になってしまっていますが、増えすぎた「やりたいこと」対応は、次回も続きます。やりすぎて、倒れないようにしてくださいね。
いろいろ詰め込みすぎて、なかなか風邪が治らないぱうぜからのお願いです(自分も気をつけます)。

ぜひ皆さん、「バーチャルコメントボックス」に質問をお寄せください。Twitterで @kfpause宛てにツイートしていただいても結構ですし、 #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。

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