目からウロコの子育てレシピ11 教師のやりかたに不安がある場合、親としてはどうしたらいいか

こんにちは。隔週火曜日担当 知的生活ネットワークのLyusytleです。子育てに関するレシピを書いています。

連載開始から、記事の投稿も10回を数えました。ちょうどゲームに関する子育てレシピの連載を終えたところでひと段落し、さて今度は何について書こうかとおもっていたところ、次のようなご相談をいただきました。

相談内容

年長の娘がいるのですが、最近クラスで先生の言うことを聞かない男の子たちのせいで、みんなが怒られて嫌だ、という相談を受けるのです。

先生の代わりに問題の男の子に注意してみたら、などアドバイスしているのですが、子どもに連帯責任の説明をするのもはばかられるのです。

こういう場合どういう風に話せばいいのでしょうか。

今回はこの悩み相談にお答えしたいと思います。

なお、学校の教師から見た見解であることをお断りしておきたいと思います。逆に言えばなかなか得られない見解であるかもしれませんね。

ライトに書くつもりが、かなり深く書く必要があったので長くなっています。お急ぎの方は

「今回のケースについて」

「今日のレシピ」

からお読み下さい。

さて、いただいた相談を、次のように敷衍(ふえん)してみました。

子どもが困っている様子を見ると教師のやり方が不安だ。まず親としては何をすればいいのか

相談内容から考えて、相談者は「子どもの困っている様子を見ていると、まず親としてできることを考えた上でかわりに自分でなんとかしてあげたいがどのようにしたらいいのか」悩んでいらっしゃるとお見受けしました。

その上で、明記されてはいませんが「どうも教師のやり方に不安がある、もしくは理解しかねてとまどっている。しかし直接いうのははばかられるので、まず親としては・・」と悩んでいらっしゃるのでは、と解釈させていただきました。

「どういう風に話せばいいのでしょうか」というのがここでの問いです。親としてできることを考えて下さっています。しかし、このケースは、お書きになっていらっしゃるようになかなか話して聞かせるには難しい内容です。どうしても連帯責任ということにふれないといけなくなってしまいますからね。

そもそも連帯責任というものを子どもにわからせることが出来るのでしょうか。

さらに、その前に連帯責任というものを子どもにとらせるのは適切なことなのでしょうか。

連帯責任について幼児に話して聞かせるのは難しい

このケースにおいては,数名の子どものおかげでみんなが怒られるというのは、私は明らかに問題があると考えます。自分のあずかり知らぬことで他の子が怒られる際、自分まで連帯的に怒られるというのは、すくなくとも幼児教育にとっては酷な話です。

連帯責任ということが問えるのは ,そのグループがある目的の達成へ向けて一致して努力するのだということをお互いが了解しており、自分の不始末がみんなの不利益を生むのだということを各個人が理解している場合だと思います。従って、これは十分に心が発達し、成長してからでないと難しいことです。

だから、小学校教育においさえ連帯責任などということはほとんどやりません。

ごく少数の例としては、修学旅行や自然教室などでの班活動の場合で連帯責任という場合があります。One for all.All for one ということも教えます。ひとりがだらだらしていてはみんながご飯を食べる時間に間に合わず食べられないままになってしまいます。そういう場合は連帯責任としてそういう個を生み出さないようにみんなが努力し、助け合うことが求められます。

しかし、遅れたからといって、連帯責任をとらせてみんながしかられたり、食べられなくなったりというようなことまではやりません。私もやりませんし、見たこともありません。させるのは連帯責任としての協力までです。そういう状況になったら、個を呼んでその子だけしかるのです。

高学年でさえそうです。ましてや小学校の中学年、低学年では連帯責任などまず考えられません。ですから連帯責任を幼児に適用するというのは発達から言って明らかに問題があると考えます。

このことから、言えるのは、幼児に連帯責任のことを話して聞かせてもこれはなかなかわからないだろうということです。すなわち、この場合話して聞かせてあげることには限界があります。

それではどうしたらいいでしょうか。

まず十分に話を聞いて事実はどうなのか確かめる

ひとつ確認が必要なことがあります。それはお子さんの言われていることが本当に本当かということです。

子どもは事実だけを話すものではない

子どもは小学校高学年でさえも、親に自分のことを言う時「盛って」しまうことがあります。特に自分にとって不利なことがある場合、自分のことは言わずにされたことだけを言うというのは実によく見られることです。

また、自分が悪くてしかられたということ自体がわからない、もしくは気づかないということもあります。しかられている自分ということがわからないのです。だからしかられてもどうしていいかわからずにぽかんとしていたり、にやにやしていたり、すぐに同じ事を始めたりして教師をイライラさせることだってあります。

このケースの場合だと、もしかしたら、

「自分もしかられているのに自分の何が悪いかわからないのでしかられていることに気づいていない」

「自分もしかられているのに、それを言うとしかられるから自分がしたことはだまっている」

などということも、子どもの発達上十分に考えられます。

親として子どもをまるまる信じてやりたいのは当然ですが、子どもは事実ことだけを話すのではない、ということもまた事実です。

学校には、お子さんのいうことだけを信じてクレームをつけてこられる保護者がかなりおられます。よく話を聞いてみると、実は全く違っていた、ということがあるのです。

ですから、子どもの言うことをそのまますべて信じてしまうことは避けなければなりません。思わぬクレーム者になってしまわないためにも必要なことですし、それ以前に、子どもがその問題を解決できないままに終わってしまうのです。

そこで、まず子どもの言うことをよく聞いてあげてください。

おかしなところがあったら、さらに丁寧に聞いてあげてください。子どもは自分を守るために少々話を盛るものだと思うくらいがちょうどいいと思います。疑ってかかるのではありません。あくまでも丁寧に聞いてあげることが必要です。

もし、話を盛ったり、自分がしたことに気づいてなかったりした場合には

「うそをいった」などと叱るのではなく、正しいことを言ってくれないと、あなたが困っていることがきちんと解決できないのだということを教えてあげてください。まだそんなことがわからないのです。

子どものいうことが正しいということがわかってきたら

さて、よく話を聞いた上でこれはどうも本当のことらしいということがわかったら,この相談者さんのいわれるとおり、親が壁になってお話をして「きっと、先生はこういうつもりでされているのだよ」とわからせてあげたり、「このようにしてみたら」と解決の仕方を教えてあげたりします。

実は、このケースの場合、「連帯責任」ではない可能性があります。教師は、言うことを聞かない子どもをしかっているだけであり、全体をしかっているわけではないという可能性です。

みんなの前でその子どもをしかるので、何もしていない子ども達まで自分も悪いことをしたかのように感じてしまうことがあるのです。「共感疲労」のような現象です。何もしていない、しかられる必要のない子どもが、友だちがしかられているのを見て気持ちが沈み、学校に来なくなる、というようなことも起こってると聞きます。

親としては、「先生は、その子をしかっているんだよ。あなたをしかっているわけではないから心配しなくてもいいんだよ」と言ってあげることで子どもを安心させることが出来ます。

ただし、教師へは相談した方がいいでしょう。おそらくお子さん以外にもそのように感じて困っている子どもはたくさんいるはずですから。相談によって、子どもはさらに安心し、そして教師は指導法を改善するチャンスを持てることになります。

受け持ちの教師に相談する

教師へ相談するというのは、なかなかハードルが高いと思われる方もいらっしゃるでしょう。モンスターペアレントって思われるんじゃないか、クレーマーだと思われるんじゃないか。何か言っていったら子どもに仕返しをされるんじゃないか。そう思ってかどうか、担任ではなく、主任だとか、教頭、副園長、時には一足跳びに校長、園長に相談に見える方がいます。

でも、それは避けたほうがいいでしょう。

まずは、担任の教師に相談して下さい。教師としては子どもがそのように困っているなんていうことが寝耳に水のことがよくあるからです。

子どもの受け取り方がちがって困っていると言うことに気づかないまま,後から困ったり悩んだりしていたということを聞いてびっくりするということがあるのです。私にも何度もありました。

ですから一足跳びに主任や教頭、校長などに言って行かれると、教師は弁明したり、真意を伝えたりすることが出来ません。またやり方の改善、「そうだったの、ごめんね」と子どもに謝るチャンスなどがないままになります。自分を信じてもらえなかったという悔しい思いをすることもあります。だからといって、教師は子ども自身に意趣返しをしたりすることはありませんが。

「教師と親は同じ方向を向いて歩きながら,協働して子どもを育てていく。」

教師の方はそう考えています。

ですから,何かあったらまず教師に直接相談してください。そのうえで・・

子どもの方に受け取り方の違いがあることがわかれば

教師の真意がうまくつたわらずに子どもが困っている場合には、教師の目の前で親がなおしてあげることができます。子どもはそれで安心します。子どもを中心とした親と教師の信頼関係もまします。

教師の方は,子どもの困り感に気づいたらそれを受け止め,指導法を変えるはずです。

私が見てきた教師達は、そのようにしてきましたし、私自身もそうしてきました。その場で「そう感じてたんだね。悪かったね。でもね、そんなつもりではなかったんだよ。そこはわかってね。これからはやりかたを変えていくからね。」そのように話していました。先日見た教師は、最後に「言ってくれてありがとう」という言葉を添えていました。

先ほど述べた「連帯責任のつもりではなかった」という真意、悪い子をしかっているだけで自分をしかっているのではなかったということを知り、子どもが安心することになります。もちろん教師はその心配をなくすために自分のやり方も改めることになるでしょう。

子どもの言うことに間違いないことがわかったら

このケースであれば、実際に連帯責任を求めていた場合などです。

その場合は教師に改善についての協力を求めて下さい。

自分のやり方で実際に困っている子どもがいることを知ったならば、教師はやり方を改善します。

親も子どもも安心させてあげることが大切だということを私たちはよく知っているからです。

今回のケースについて

今回のケースについてもう一度考えて見ましょう。

まず、子どもの話をじっくり聞いてあげた上で、勘違いとか話を盛っていたということではなく、事実その通りであるとします。つまり、「子どもは何も悪いことはしていない状況で、言うことを聞かない友だちのためにみんなが怒られているということ」がまちがいなさそうだとします。

子どもがこのように困っているのだということを教師に相談します。連帯責任は子どもにつらい思いをさせているのだということを伝えます。

おそらく、教師は連帯責任をとらせているという意識はないと思います。ある子どもの行動の悪さをしかっていただけのつもりだと思います。よくあることです。ある子どもがしかられていることを、自分まで一緒にしかられていると感じ、自分がしかられているわけではないのに自分がしかられている感覚になり気分が沈んでいるという状況。今回のことも相談をすることによりそのことがわかってくるんじゃないでしょうか。

教師は、「連帯責任のつもりはなく、ある子どもをしかっていただけなのだ」という真意を伝えた上で、何もしていない子までそのことでつらく思っていたことについて思い至らなかったことを子どもにわび、その上で「今後はその子だけをあとから呼んでしかるようにするからね、心配しなくていいよ」と言ってくれると思います。

保護者は言って良かったと思い、教師を信頼するでしょう。教師は言ってもらって良かったと思い、指導法の改善を行いながらさらに保護者と協調していこうとするでしょう。子どもは信頼関係にある保護者と教師との間で安心して成長していくでしょう。

私たちはこのような保護者との対話を願っていますし、事実このようにしてきています。

このようなことの繰り返しにより、保護者と教師との信頼関係を築いてほしいと思います。親と教師が信頼し合って、一緒に自分を見つめてくれていると感じること。それが子どもにとって一番大切なことです。贔屓とか仕返しなどの心配はいりません。

残念なことに、教師が自分のやり方にこだわり、話を聞いてくれなかったときは・・・。それはまた別の問題になりますのでここではふれないことにします。

今回のレシピ

まず子どもにじっくりと話を聞きましょう。話が事実を述べていそうならば、教師に会って直接相談しましょう。

教師との対話により、子どもの受け取りの違いだということがわかったら、その場で教師と一緒に訂正してあげましょう。

そうではなく明らかに子どもの言うとおりだったら、教師に改善の協力を求め、同じ方を向いて協働して子どもを育てようとしているのだという思いを伝えましょう。

教師に確かめることで、教師には弁明のチャンスを持たせることになり、親は教師の真意がわかります。ラインなどで噂を振りまいたり、一足飛びで主任や教頭などに相談しに行くのはよくありません。教師は改善ではなく萎縮していしまいます。それは子どもの成長にとってよいことにはなりません。

教師と親がよい関係を作ることが、ひいては子どものためなります。これは贔屓をするとか、意趣返しをされる、人質をとられているなどというような話ではありません。必要なのは信頼関係の構築です。

終わりに

今回こそは少しライトに、と思っていましたが、やはり内容的には詳細に述べる必要があり、長くなってしまいました。

何か子育て上の相談があればおたずね下さい。

それではまた2週間後にお会いしましょう。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

シェアする

フォローする