「悪魔の代弁人って?」議論を深めるために必要な視点とは

ぱうぜセンセのコメントボックス

【前回のおさらい】「レポートに主張・理由・証拠の三点セットが大事っていうのはわかったんですけど、どうやったらいいんですかね」

“深みのある議論をするための心がけは?”

レポートでも大事だし、実りある会議のためにも必要な視点だね。それじゃあ、コーヒーを淹れ直して考えてみよう。


(前回のお話はこちら)レポート”ピアレビュー”のすすめ~提出前に「他人の目」をいれておこう

「みんな仲良し」”だけ”ではダメなんです

「明日香さんは、レポートを書き始めたときに友達と話をしたっていうけど、どんな感じだったのかな?」

「○○学のレポートは、問いが与えられているタイプだったので、どういう資料を集めたら良いのかな、って相談しました」

「みんなで手分けして借りたりコピーしたりしたんですね、先輩たち賢いなあ」

かすみさんの相づちは、先輩である明日香さんの気分を良くしてくれる。良い聴き手だ。

「でも、”自分の意見を書きなさい”ですから、それぞれ考えなきゃいけないね、ということで、ブレインストーミングを」

「ぶれいんすとーみんぐ?」

「アイデアを出しあいっこすることだね」

「はい。先生がどういうことを聞きたがっているのかな、とか、それぞれの考えをはき出してみるためにドンドンやってみました」

明日香さんの言っているとおり、ブレインストーミングのコツは、「お互いを否定しないでどんどん出してみる」ってことですね。

「アイデアの通せんぼ」を回避しよう – 力重の「ブレインストーミング考」
とにかく「出す」のが大事なのです

「でも、途中から、Aさんの意見もいいね、Bさんの意見もイイねってなって」

「良い気分でいざ書き始めよう、と思ったら、なんだかうまくいかなかった・・・というわけだね」

「え、なんで分かったんですか?」

アイデア出しの方法としてはすばらしく良く出来ているんだけど、その先が続かないんだよ、それだけじゃ」

「えー、先輩たち凄く頑張ってるのに。どうして詰まってしまったんですか?」

 「我田引水」の罠

「かすみさん、実はね・・・一晩寝てから読み返してみたらすごく恥ずかしくなってきちゃって」

「どうしてですか?」

「この問いに対して集めてきた資料、なるほど自分の意見に沿っているんだけど、これで答えたことになるのかなあ・・・って自信がなくなっちゃったんです」

あ~、これ、我田引水の罠だね。自分の田んぼに勝手に水を引っ張ってきちゃう。

「問いに対して、理由と証拠をもってきても、あまりに自分勝手に集めてきたんじゃないか、って心配になっちゃうってことですか」

「センセ、こういうときってどうしたらいいんですか?」

「ん、それはね、”悪魔の代弁人”を置けばいいんだよ」

「・・・せ、センセ・・・その悪魔ポーズ、なんすか・・・?(まどか☆マギカの見過ぎですか・・・)」

いや、ほんとにそういう言葉があるんですよ。

悪魔の代弁人=全力のライバル

「とりあえず、この本のはしがきを読んで欲しいんだ」

<悪魔の代弁人>を立てるかどうか、クライアントこそ問われている | SYNODOS -シノドス-
浅羽祐樹先生のロングインタビューです

悪魔の代言人とは、いってしまえば”自分とは異なる意見を持つ最強のライバル”ってこと」

もともとはカトリック教会にて「聖人」を認定するときに、「ほんとにエラい人?」なのかを検討するため、あえて悪魔の立場で「アイツにはこんな悪行が」とあげつらう役ということらしいです。詳しくはリンク先を参照してください。

「最強の、ライバル・・・」

「明日香さんたちの議論に足りなかったのはココ。明日香さんが一応”主張・理由・証拠”の三点セットを立てて、議論をたてることに成功した。しかし、それだけでは足りない。ものすごーく頭の回るライバルに、ケチをつけてもらうんだ」

その証拠はおかしい!とかですか?」

「それもあるね。他にはどうかな?」

「あ、反対の立場の”主張・理由・証拠”を探す、っていうのもありそうですね」

「うん。明日香さんは、自分の議論を立てるだけじゃなくて、ライバルの議論にも疑問を呈さなくてはいけない」

「守ったり、攻めたり、いろいろ忙しいですね」

「あ、これをやっておけば、我田引水にならない!」

一本調子じゃなくて、複数の議論を想定して、まとめればいいんだ。そうすれば、自然と議論は深まっていくんだよ。

反対側でも手を抜かない

「これ、けっこう大変ですね・・・」

「大変だけど、ゼッタイに守って欲しいのは、”反対側の議論にも手を抜かない”ことなんだ。”複数の視点から論じろ”という課題を出すと、たいてい”わら人形”が出てくるから、困っちゃうよ」

「え、何ですか、それ」

「テキトーな反対説を立てて、それを論破したつもりになっているんだよ。そりゃ、反対説に適当な理屈だけ付ければ、さも自分の議論が強そうにみえるだろう。しかし、そんなの採点する側から見れば・・・ね」

「バレバレなんですね・・・」

「でも、頑張りすぎると自分の意見が負けそう・・・」

「そうなったら、そっちに鞍替えしたっていいじゃないか。それが間に合うくらい早めにやればいいんだよ」

「これ、”早めのピアレビュー”のタイミングですね」

「あ、そっか、一人でやるのが難しければ、お互いが”悪魔の代弁人”役をやればいいんですね」

主張と人格を切り離す

「でも、それって仲悪くなりそうで、やだな・・・」

「いやいや。そこは割り切るんだよ。主張と人格とを切り離さなければいけない

・・・あれ。かすみさんがなんか泣き出しそうだ。難しいかな。

「センセが言いたいのは、わかるんですけど・・・」

「悪口じゃなくて、批判、なんですよね」

明日香さんはわかってくれたようだ。

「さっき、かすみさんが私のレポートを読んで色々コメントしてくれたとき、最初はムカッとしたんだけど、これはレポートの内容について批判してくれるんだ、良くしようとしてくれてるんだって思いなおして、嬉しくなったんです」

「はい、先輩すごいなー、って思いながら、間違ってるところは間違ってる、って言っただけですから・・・あっ」

「議論に対して批判したとしても、それは書いた人の悪口を言っているわけじゃない。そこを切り離せるようになることが大事なんだ」

「・・・やっとわかりました・・・そういうことができる友達、早く見つけます」

うん、大学生活のうちに見つかると、一生の友達になると思うよ。

大学は春休みへ

「先輩、いい話をありがとうございました。来年、○○学のレポート、頑張ってみます!」

「こちらこそ、良いコメントをどうもありがとう。せっかくだから、私も”ピアレビュー”手伝うね」

「ありがとうございます!」

おや、もう良い友達が見つかったみたいだ。・・・いいなあ。

「これで期末レポートも終わりで春休み!センセはこれから何するんですか?」

え、あの・・・その・・・

「君たちの試験の採点とか、その他いろいろな試験とか、原稿とか・・・」

大学教員に春休みなんてものはありません。やっと講義が終わったので、これからモノ書きタイムです・・・

「うわあ・・・こ、これからも研究室、お邪魔してもいいですか?」

「もちろんどうぞ。ただ、講義がないから、コメントボックスが、空っぽだ・・・さみしいなあ」

「だったら、他の人にも聞いてみましょうか」

そうだねえ、そうしてみようか。

◇ぱうぜセンセのメモ◇「悪魔の代弁人」モードを使いこなせるようになって欲しい

みんな遠慮しちゃって突っ込んだこと言わないから、いざ批評しようとすると仲悪くなっちゃったりするんだよね。主張と人格は違うことを、分かってくれる人がもっと増えるといいなあ。

編集後記

この話題は以前、「カフェパウゼをあなたと」のほうでも書いたことがあります。

<悪魔の代弁人>と前置きすることの効果 – カフェパウゼをあなたと
ただの会話に、「ディベートのモード」を導入することができる …
ただの会話に、「ディベートのモード」を導入することができるのです

ぜひご参照ください。

なお、今回は次回予告をつけませんでした。<第一部完>という感じです。春休みでして、学生も目の前にいませんし、本当にコメントボックスが空になってしまいました。次週はお休みさせていただきますので、ぜひ皆さん、「バーチャルコメントボックス」に質問をお寄せください。Twitterで @kfpause宛てにツイートしていただいても結構ですし、 #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。

ぱうぜ
2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
コーヒー片手に語らいを!わたしと、みんなと、そしてあなた自身の過去・未来と。

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