目からウロコの子育てレシピ5 その「がんばれ!」 必要とされていますか?

こんにちは。隔週火曜日担当の「知的生活ネットワーク」のLyustyleです。

これまでの回はかなり分量が多かったので,今回は少しライトに行きたいと思います。

さて,「がんばれ」「がんばれ」が口癖の親や大人はいませんか?

がんばれって,いったいこれ以上何をがんばったらいいのでしょう?そういうことを考えてみたことはありますか?

お子さんは,もう十分がんばっているのではありませんか?

すでに十分がんばっている子どもたち

朝,学校の門で子どもを迎えるとき,いつも思うことがあります。

ああ,この子たちは,この炎天下の中,少なくとも10分以上必死に歩いてようやくここまでたどり着いたんだな。よくがんばったね。

だから,いつも「おはようございます。よく来たね。」という言葉をかけます。これには,本当によくがんばってここまできたね,という気持ちを込めています。

朝,教室であいさつをするときもそうです。今,この場にいるこの子たちはそれだけでもう十分がんばってきている。寒い朝は必死に布団から出て着替え,寒い寒い風の中を一生懸命歩いてやっとここまでたどり着いたのです。もう十分がんばっているんですね。

その子たちに「寒い中,よく来たね。」「熱い中,大変だったね」そういう一言が言えた日,私は一日中調子が良かったことを思い出します。

もう十分がんばっているんです。

「がんばる」ということばをとらえなおす

がんばれって,とても便利な言葉です。親,教師,上司は,子ども,部下へ「がんばれ」と言いさえすれば事足りるのですから。

でも,子どもや部下からすれば,「何をどうすればいいの?これ以上・・・」という無責任な言葉なんですね。

その「がんばれ」。具体的な言葉に直せますか?

A「おそうじ,がんばれ!」 (もう,がんばってるよ)

B「ぞうきんがけをするとき,拭いているところをみてごらん。もっときれいにふけるよ」 (ああ,そうか・・)

A「80点か。もっとがんばれ」 (人の気も知らないで・・・がんばってがんばって80点だったのに・・・。これ以上どうしろっていうんだよ)

B「80点か。がんばったんだな。この計算の間違いは、筆算を丁寧に書いてないから位取りを間違ったんだ。今度から筆算とはいえ、丁寧に暗いを揃えて書くと間違えずに済むだろう。大丈夫だ。90点は確実だぞ」 (そうか・・・筆算をいい加減な字で書かなければ間違わずにすんだのかも・・・)

いかがでしょうか。「がんばれ」を封印し、具体的な方法を表す言葉で話をすれば、言われる方は受け取りやすいのではないでしょうか。

もし、今言おうとしている「がんばれ」をうまく具体的な言葉にできない場合、言っている本人にもどうしていいかわからないのだということに気づいてみてください。そんな「がんばれ」は言わないほうがまし。言った方はなんだか役目を済ましたという自己満足を得られるかもしれませんが、言われる方ははた迷惑な話です。

私たち教師はなるべく「がんばれ」という言葉を使わず,ほかの具体的な言葉はないか探します。それでもがんばれと言ってしまうことがあります。そんなときに,「あ・・」と気づくことができたならば,具体的なことばで言い直します。直せない時は,大いに反省ですね。

「がんばったねえ」で救われる

テストでどうしても100点がとれない,とか,かけっこでいつも最下位など,親から見るとついいらいらして「もっとがんばれ!」といってしまうことがありますよね。

親は,子どもの能力おかまいなしに「このラインまできてほしい」という目標をおっかぶせてしまい,そこに達しない子どもをなんとか自分の思うラインまでひきずりあげようとするのです。もうどうしようもなく「もっとがんばれ!」と言ってしまうのですね。実際の子どもの能力おかまいなしに。

何度も言っているように,なまけているわけではないかぎり,子どもはそこに至るまで一生懸命にやってきました。何度やっても100点がとれない,どんなにやっても最下位。それだけで十分子どもはがっかりしています。

そのとき「なんでここまでこれないんだ!」と思う気持ちをちょっと静めて,これまできっと頑張ってきたんだなあと思ってみましょう。そして「がんばったんだなあ」「がんばってきたね」と一言。

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きっと子どもは救われるだけでなく,わかってもらえたという安心感,嬉しさから,次の頑張りへ向けて勇気をもらうことができると思いますよ。

「がんばれ!」と言われるよりもはるかに「がんばろう!」と思うでしょう。

そのうえで,具体的なアドバイスをいうことができれば言ってあげてください。

言われてうれしい「がんばれ!」もある

でも,「がんばれ」じゃないとダメな時も確かにあります。

運動会の徒競走で今にも抜きそうなとき,また抜かれそうなときなどは,もう「がんばれ!」としか言えませんよね。「もう少し手のふりを大きく・・・」などと具体的な言葉を言っているうちに目の前を通り過ぎて行ってしまいます。そして,がんばれ!だけで十分通じます。

試験の日や試合の日など,今日は本当に力を出し切らないといけない!と不安交じりに前を見つめている子どもに,一言「がんばれ!」。これもそれしか言えないけど,おそらくその時の子どもの心に刺さる最高の「がんばれ!」だと思います。

啐啄(そったく)の機という言葉があります。生まれそうな卵の殻を親鳥が外からつつく音と,内側からひな鳥がつつく音を表しています。親と子のはたらきが一致することです。「がんばれ」と言ってほしい子供に最高のがんばれ。まさに啐啄(そったく)の機です。そのような言われてうれしい「がんばれ!」をいいたいものですね。

まとめ

子どもは十分がんばっている。

「がんばれ!」という言葉を,具体的な言葉になおしてみる。直せなかったら自分でもどうしていいかわからないので言わないほうがまだまし。

一生懸命にがんばっているのに効果が上がらない子どももいる。そんな子には「がんばったんだね」とこれまでのがんばりを認め,もし可能ならば具体的なアドバイスをしてあげる。

「がんばれ!」を必要としているタイミングもある。そういう時の「がんばれ!」は子どもの心にささる。

どうぞ,「がんばれ」といいたくなったら,その「がんばれ」という言葉を目の前の子どもは必要としているのか,立ち止まって考えてみてください。

それではまた,再来週お会いしましょう。

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