ディベートの型で議論の立て方とツッコミどころを探してみよう

ぱうぜセンセのコメントボックス
【前回のおさらい】
ディベートの手順はメリットとデメリットを比べること、だけど…
「お互いに批判していって、最後に生き残ったのをジャッジが比べる、というわけ」
「ううーん、どういうことを言っていけば有効なのか、わからないなあ」

「ディベートってどんなことを話せばいいんですか?」

それじゃ次は、議論の立て方・叩き方について考えてみよう。

(前回のお話はこちら)ディベートの手順をおさらい!フローシートも書いてみよう
(前々回のお話はこちら)発想のために「ディベートモード」のスイッチを入れてみよう

立論の型をためしてみよう

「これまでのところ、賛成と反対がはっきりわかれる論題で、肯定側と否定側に分かれて、肯定側は、論題を具体化する『プラン』プランをとったときのメリットを、否定側がデメリットを立てる、ってことはわかったかな」

「はい、これを立論っていうんですよね」

「いくつか形があるけど、既に紹介した二冊はちょっと違う『型』を用意しているから、それを見ていこう」

その1:現状分析から改善へ

松本茂・河野哲也『大学生のための「読む・書く・プレゼン・ディベート」の方法』玉川大学出版部、2007年、141~145頁は、割とシンプルな立論(基調スピーチ)のかたちを、「作成用紙」というかたちで紹介しています。

「この『作成用紙』では、本論部分はどういう構成になっているかな」

「ええと、まず、メリットがいくつあって、それは○○と○○である、と説明したうえで、それぞれのメリットについては、以下のようになっていますね」

(以下、上掲箇所から抜粋・加工しました)

メリット1:

小論点A(現状の問題分析):

小論点B(論題との関連):

小論点C(問題の解消/メリットの重要性):

「つまり、現状こんなヤバイことがあるけど、この論題とはこう結びついていて、プランを採ると問題が解消する、ってことですかね」

「そうだね。続いて、否定側のも見てみると…」

デメリット1:

小論点A:(肯定側プラン〔論題〕の目的・特徴)

小論点B:(デメリットが生じる過程・理由)

小論点C:(デメリットの深刻さ)

「こちらは、相手の言うことを受けて、それをやるとデメリットが生じてしまい、しかも深刻である、ということですね」

「松本・河野本の採用した枠組みは、わりとすんなりわかるんじゃないかな。初心者にお勧めだね」

その2:成立条件を考えてみる

「ほかにもあるんですか?」

「議論を強くするためのトレーニングとしてディベートを紹介している瀧本さんは、メリット・デメリットが成立するための3条件、という整理をしているよ」

瀧本哲史『武器としての決断思考』(星海社新書、2011年)103-128頁は、その丁寧な解説になっています。


「瀧本さん(103頁)によると、メリットの3条件は以下の通り」

(1)内因性:何らかの問題があること

(2)重要性:その問題が深刻であること

(3)解決性:問題がその行動によって解決すること

「逆に、デメリットの3条件は以下の通り(111頁)」

(1)発生過程:論題の行動を取ったときに、ほかの問題が発生してしまう過程

(2)深刻性:その問題が深刻であること

(3)固有性:現状ではそのような問題は生じていないこと

「ん、なんかこんがらがってきた・・・」

「具体的な例が無いとしんどいから、ちょっと前回のフローシートの続きを埋めてみようか」

 メリット・デメリットを立ててみよう

「前回出した例は、論題が『日本は義務教育を早期化すべきである』で、プランが英語教育も含めたかたちになってて、そしてメリットが、ええと」

「英語が得意になる、っていうのを出しましたね」

「それ、型に当てはめてみてよ」

「ええと、『このプランを採ると、英語が得意になるメリットがあります。A)現在、小学校~年からはじめていますが、英語が苦手な人が~~%います。B)5歳頃から英語教育をはじめるというプランを採用します。C)5歳頃から英語教育をはじめると得意になるというデータが○○新聞に書いてあります』こんな感じですかねえ・・・あ、データとかはでっち上げですけど」

「そうそう、型その1にはめるとそんな感じ。その2だとどうだろうか」

「(1)内因性は、『現在、英語が苦手な人が~~%居ます』、(2)重要性は、『この問題は、グローバルする国際社会での日本人の活躍を阻害するので重大です。』、(3)解決性は『プランをとることで得意になる人がふえて、国際進出が加速します』って感じですかねえ」

ちょっとだけ角度が違う検討をして、議論が深まりましたねえ。重要性をなんとかしようとすると、もっと深掘りして考える必要が出てくるね。

「それじゃ、デメリットの『日本の財政悪化』はどうかな、真理哉くん」

「こっちは、『A)義務教育早期化というプランでは、国が負担することになります。B)国が負担すると、赤字が増えます。C)プランを採らなかった場合に比べて、日本の財政が~~くらい悪化しますので、日本の財政破綻の懸念が高まります』とかでどうでしょうか」

「その2に当てはめてみるとどうだろうか、文哉くん」

「これはちょっとやっかいですね。『(1)発生過程は、追加の費用を国と地方自治体が負担します。そうすると、両者の財政が悪化します。(2)深刻性は、今すでに財政危機に瀕している自治体もありますし、日本もデフォルトの危険が…アルゼンチンなんてすごく苦労してますよね。(3)固有性は、いま日本は財政危機になっていません』ですかね」

うーん、さくらさんたちがあまり納得していないようだ。

ツッコミをいれてみよう

「なんだかモヤモヤします…反論してもいいですか?」

「もちろん。相手のいうことの矛盾やおかしいところを突っ込むんだね」

「でも、どこから突っ込んだらいいのかよくわからない…」

「あえて瀧本さんの型も紹介したのは、ツッコミのやり方にも対応しているからなんだ」

これは図解したほうがわかりやすいから、黒板を使おう・・・よっと。

1)内因性:何らかの問題があること ←そんな問題そもそもある?

2)重要性:その問題が深刻であること ←たいした問題ではないのでは?

3)解決性:問題がその行動によって解決すること←重要な問題でも、これでは解決しないよ?

(瀧本・前掲書138-139頁を参照し作成)

「あー、そういわれてみれば」

「同じ事を、否定側に対してもやってみよう」

(1)発生過程:論題の行動を取ったときに、ほかの問題が発生してしまう過程 ←プランだけでは問題は発生しないよ?

(2)深刻性:その問題が深刻であること ←問題が発生しても、深刻じゃないよ?

(3)固有性:現状ではそのような問題は生じていないこと←プランをとってもとらなくてもその問題は発生するんだよ?

「最後のだけ、ちょっとわかりにくいですね」

「さっきの財政破綻デメリットだと、『日本は義務教育早期化をしようがしまいがそのうち破綻します!』っていうことだよ」

「ええええ、そんな、身もふたもない・・・」

「でも、確かに、否定側立論のおかしなところを指摘できますね」

フローシートに書いてみよう

「それじゃ、いままで出たことを踏まえて、反論も考えてみて、自力でフローシートを書いてみてほしい。ちょっと先生これから出張の準備しなきゃいけないから、続きはまた来週でいいかな?」

「はい、それじゃ答え合わせは来週で」

「そういや、なんでこれがレポートに役に立つのかって、まだ教えてもらってないですよ」

「みんなでフローシートをみながら、それも考えてみようか」

◇ぱうぜセンセのメモ◇

「ツッコミどころ」のポイントって、聞くだけだと使いこなせないから、試しにやってみてもらおう。あわわ、出張準備しないと・・・。

編集後記

ということでディベート編、なかなか終わりませんが次回でたぶん一区切りつきます。お時間のある方は、続きのフローシートを書いてみてください。

ぜひ皆さん、「バーチャルコメントボックス」に質問をお寄せください。Twitterで @kfpause宛てにツイートしていただいても結構ですし、 #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。

ぱうぜ

2013年春から大学教員になった駆け出しの研究者。専門は行政法。
個人ブログとして対話をテーマとした「カフェパウゼをあなたと」を運営中。
http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/

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