発想→「整想」→成果物!伝わるように産み出すための3つのステップ

ぱうぜセンセのコメントボックス
ふう、ようやく終わった・・・1年生22人分の中間レポートにすべて手書きコメントいれて返したぞ。分からないところは聞きに来るようにって伝えたんだけど、だれかオフィスアワーに来るかなあ・・・
「センセ、さっそくいいですか?青字コメントの意味がわかんなくて・・・」
お、さっそく。

「レポートの構成に気をつけろってどういうことですか?」

映二くん、さくらさん、そして真理哉くんそろってやってきた。・・・あれれ、新聞部部長になった文哉くんまでいるや。ちょうどいいや、みんなまとめて相手しよう。


(前回のお話はこちら)とりあえず3日やってみる!初めてのレポートで気づいたコツ

レポートへの2種類のコメント

「あれ、文哉くんと真理哉くんってもしかして・・・」

「そうなんです、実は兄弟」

・・・そうか、文哉くんはうちの学部じゃないから気がつかなかったんだな。

「弟の基礎ゼミがぱうぜセンセ担当だって聞いて、せっかくだからレポートの直し見せてもらったんです。コメント、二種類あるんですね」

そう、赤字は誤字脱字や不適切な脚注など、形式や表現のミス。仮提出の段階でピアレビューを経ているから、これはかなり少なかったね。

レポート”ピアレビュー”のすすめ~提出前に「他人の目」をいれておこう
ピアレビューについてはこちらをどうぞ

「脚注が足りないよ、っていうのは気をつけます」

「でも、青字のほうはなかなか高度な・・・」

「そう、青字は構成に関するコメントなんだ。初めてのレポートだから、どうしてもうまくいってないところがあるんだよねえ」

「せっかくなんで三人のレポートをお互い見直してみたんですけど、青字コメントってこんな感じですね」

  • 段落の順番がおかしい
  • 「はじめに」で述べたつながりが本文で生かされていない
  • 段落と段落の間がつながっていない
  • 見出しレベルがそろってない
  • 「本論」「疑問の提示」など、論文作成の骨が透けちゃってる

そうだね、だいたいそんな感じ。

思いつく順序と読み手にわかりやすい順序

「それじゃあ、真理哉くんのレポートについて少し質問をしたい。今回、どういう手順でレポートを書いたのかな?」

「今回は課題図書を読んで自分が疑念に思った点から出発してレポートを書け、という課題でした。なのでまず本にフセンを付けながら読んで・・・ほら、ここの段落。『どうしてそうなの?そうは限らないんじゃ』と思ったので書きました」

「だから、真理哉のレポートは・・・うーん、これ、読み返した?」

新聞部長の目が光る。

「何度も読み返したし、ピアレビュー相手のエリさんも『わかるよー』って」

「気になるのはね、『○○とは限らないんじゃないかと思ったので、○○の定義を調べてみました』とか」

うん、真理哉くんのレポートは、【自分がそう考えた順番】がわかるレポートなんだよねえ。

「これ、どこが大事なのか、議論がつながっているのか、わかりにくい」

「この段落がこの位置にある意味がよくわかんないなあ」

「レポートに必要な【問い・答え・論拠】はあるんだけど、なんだかぼやっとしてる・・・」
その「問い」は何のため?レポート課題の目的とは
問いと答えと論拠、これは思いのほか学生も出来ていました

たぶん、ピアレビュー相手のエリさんは、レポートを書くときの気分が分かるということで共感してくれたんだろう。しかし、それでは説得的な文章にならない。

「連想してってどんどん調べる内容を広げていったのはよくわかるんだけど、何を伝えたいのかがわかりにくいんだよねえ、もったいない」

「え、それじゃダメなんですか?5枚埋めるのに必死になって調べたんですけど」

努力は認めるけど、もう一歩上に行こう。

発想、「整想」、そして成果物へ

「真理哉くんの失敗はね、発想と『整想』とを区別しないで、発想からそのままレポートを書いてしまったことにあるんだ」

「「え、『整想』って何ですか?」」

ああ、これは倉下忠憲さんの造語だった。倉下忠憲『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』(技術評論社 ,2012年)の中核のひとつだね。

「この本の第4章は、生まれたアイデアを伝わりやすいかたちに整理することをさして、『整想』と呼んでいる(特に164頁)」

「あー、確かに、面白かった映画の話を熱弁しても、なかなか伝わらないことってありますね(前掲書・162頁)」

どんなに優れたアイデアでも、受け手に伝わらなければ意味がない。伝わりやすさを意識して、大事なものを選び取ったり、並べ替えたり、構造化する必要があるんだ

「真理哉さんのレポートって発想や目の付けどころはスゴいんだけど、どうしたらそれが上手く伝わるかがあまり考えられていないから、もやっとしちゃったんですね」

「さらに、その整想を経た上で、最終的な成果物にするんだ。今回なら、ワープロソフトを使って、脚注とかも整えて、5枚前後にするっていう要件があったね。それに合うように作り上げる」

一気にここまでやろうとすると、だいたいは思いつきで突っ走るレポートになりがちです。

「発想と整想と成果物。慣れないうちは、ひとつひとつの段階を踏みながらやるといいよ」

 「発想者」と「編集者」を分けよう

「発想だと、『えり好みしなくていいからどんどん出せ』っていうじゃないですか。『整想』って、読み手のことを考えるんですか」

「そう。大事なところを選び取ったり、読み手にわかるように構造化するというのは編集に属するから、冷静な頭が必要だ」

「それって、役割がずいぶん違いますね」

「新聞部でも、ひとつひとつの記事を書く人と紙面に組み直すときに各記事の大きさや配置を考える人は違うんですよ」

「編集をするという視点をいれるためには、一旦落ち着いて、ツールを変えたりして気分を変えて取り組むといいね」

アウトラインを作ろう、育てよう

「そういえば、さっき分からなかったことが・・・構造化、って何ですか?」

「うーんと、文章のまとまりにレベルを付けて見出しをつけることだね。イメージしにくくかったら、目次をイメージするといい」

戸田山和久『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』(NHKブックス、2012年)では、第5章でアウトラインの育て方がきちんと説明されています。

「アウトラインをつくりながら文章を書くためのアウトライナーっていう種類のソフトも色々あるんですね」

「Wordだって立派なアウトライナーなんだけどね、使いこなしている人は少ないね」

Happy Outlining! Index
アウトライナーについてはこちらのまとめ(これ自体もアウトライン!)が有益です

「まあ、『思いついたことをどんどんフセンに書く』(発想)→『並び替えてナンバリングする』→(足りない要素があったら継ぎ足す)→『その順番で構造化したメモをつくる』(整想)という方法なら、アナログでもできるから、やってごらん」

「あと、戸田山先生の本を読んでると、アウトラインって『どんどん育っていく』ものなんですね」

「そう、最初はスカスカでもいい。書き進めていくと『あれ、足りないな』と感じる場面がやってくる。そうなったらもう一度発想のプロセスに戻って、調べて、整想して・・・と繰り返していくと良いよ」

◇ぱうぜセンセのメモ◇

発想が「食材集め」なら、整想はレシピを考えて順番に下ごしらえしていって、そして調理で成果物としての美味しい料理にする、っていうイメージなんだけど、伝わるかなあ。何度もやっていくと、効率のいいやり方も自分なりにつかんでいけるし、やってみてほしいな。
これって、レポートだけじゃなくて定期試験とかも同じなんだが、うまく伝わったかしら・・・。定期試験については前に明日香さん達に説明したけど、あとで改めて説明しなきゃ。
「定期試験後にもう一回?」アウトプットとインプットを行き来しよう
自分で小問を立てて答案構成メモづくりをすることをお勧めします

編集後記

基礎ゼミ中間レポート講評シリーズ第一弾です。第二弾、第三弾もありますので続きます。いやはや、ほんとに22人全員分にコメントつけて個別に相談受けるのってしんどかった・・・。乱打戦のような気分です。自分自身もすごく勉強になりました。

ちょっと内容が高度になってきていて難しいかもしれません。
ぜひ皆さん、「バーチャルコメントボックス」に質問をお寄せください。Twitterで @kfpause宛てにツイートしていただいても結構ですし、 #ashitano をつけて投稿していただければ適宜拾いますので、どしどしお寄せください。

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