ネットでの検索のコツは?「情報地図」作りからはじめよう

ぱうぜセンセのコメントボックス
レポートの仮提出、全員きちんと持ってきてくれたから、ここからさらにピアレビューだね。おお、みんな張り切っている。
「センセ、ちょっといいですか?」
前回、機転をきかせて映二くんのピンチを救ったさくらさんが、相談しにやってきた。
「映二くんとのピアレビューで、もうちょっと調べたいなあと思ったんですけど…何度かやってみたんですけどうまくいかなくて」
「僕も一緒にやってみようかなあと思ったんですけど、詰まっちゃったんです」

「ネットでの検索、上手くいくコツとかありませんか?」

安易に聞いて欲しくないネタだけど、この二人は相当議論したうえで質問してきているし、まずは努力の跡を確認してみようかな。

(前回のお話はこちら)提出直前に大慌て!故障トラブルの備えをしておこう

「とりあえずネットで検索」はダメ!

「ええと、何で悩んでいるのか、順を追って教えてくれるかな?」

「はい、今回、私はクラウドファンディングについて調べようと思いました」

「どうして?」

「センセが前に教えてくれたスープやさん、最初の資金の一部をネットで集めたって聞いて、興味を持ったんです」

「それで?」

「そういうのなんて言うんだろう、って思ってたら、友達がクラウドファンディングって言うんだって教えてくれて」

「それで?」

「そのまま調べはじめたはいいんだけど・・・結局よくわからなかったんです。そのうち、そのスープやさんの評判とかはわかってきたんですけど、肝心の”くらうどふぁんでぃんぐ”についてはどうにも」

ふうむ、ちょっとショック療法がいるかな。

「ええとね、この本のタイトルを見てもらえるかな?」

喜多あおい(著)『プロフェッショナルの情報術 なぜ、ネットだけではダメなのか?』(祥伝社、2011)は、実際にゼミの参考書に指定しています。

「ネットだけじゃだめ、ですか・・・」

「そう、この著者は、最初に手厳しいことを言っている」

いきなり図書館に出かけて本を手に取ってみたり、インターネットで検索してみても、たどりつきたい答えをズバリ得られる確率は非常に低い、ということをご存知でしょうか。下調べもせず、作戦も立てずに「とりあえず図書館へ」「まずはネットで検索」は、時間と労力のムダ。プロは決してやりません。(喜多あおい・前掲書、21頁)

「えー、だめなんですか・・・調べ物なのに、図書館やネット使っちゃいけないんですか?」

そうじゃないそうじゃない。「いきなりはダメ」ってことなんだよ。迷子になっちゃうから。

情報地図をつくろう

「さくらさん、慌てすぎだよ。『下調べもせず、作戦も立てずに』って言ってるんだから、作戦立てればいいってことですよね」

そういうこと。どこをどのように探すかのリサーチ戦略を立てよう、と提案されています(前掲書23-24頁)。

何のために調べるの?

「喜多さんは、テレビ番組のリサーチャーというお仕事の人なんだ。ほら、クイズ番組とか情報バラエティとか、あらかじめ調べて裏取りをする人がいるんだよ」

綿密なリサーチが無ければ、クイズの答えが合ってるのか間違ってるのか判定できません。

「だから、最初に『クライアントの欲しいものは何か、ニーズをつかめ』と言っている。『提出先のことを考える』とも言い直しているね(前掲書24-25頁)。」

その例として、”ジュース作りの道具”をリサーチした経験をあげています(26-27頁)。なんでも、ジュースをつくる道具にはミキサー、ジューサー、スクイーザーといっぱいあることがわかったとのこと。使いやすさや価格を徹底的に調べた上で、ジューサーがいいだろう、と判断して、ある日思い立って買ったところ・・・

「え、本当はバナナジュースが飲みたかったのに、作れないジューサー買っちゃったの?」

「バナナジュースはミキサーじゃないと作れないんだって。よっぽど性能のいいジューサーなら別だけど」

「あー、そっか、ジュースなら何でも一緒かと思ってたら、実は・・・ってことなんですね」

「そう。よくよく考えるとバナナジュースが一番飲みたかったのに、ってことに気がついたみたい」

何のために調べ物をするのかをはっきりさせておかないと、余計な時間を食ったり、目的を果たせなかったりするんですね」

「別に、ジュースの機械に詳しくなることが目的じゃなくて、バナナジュースが飲みたかったんだもんね」

「だから、さくらさんも、どうしてクラウドファンディングを調べたいのかをもう一度よく考えてごらん」

この場合、クライアントに当たる人は居ないようにも思えます・・・しかし、単にレポートのネタに困ってたからなのか、それとも自分もお店を開いてみたいからなのか、はたまた・・・と、色々な切り口が考えられます。

「レポートのネタに困ってた、という場合でも、そもそもレポートの問いがきちんと立てられているか、ということになるね」
その「問い」は何のため?レポート課題の目的とは
そもそもレポートの問いがないと調べる範囲もまとまりません

まあ、調べながら考える、ってことも当然ありうるから、詳しくはリンク先を見てもらうことにして、今回はあまり深く突っ込まないことにしようかな・・・。

「ええと、とりあえず、『新規にカフェを立ち上げる人にとってのクラウドファンディングの魅力と問題点』を調べる、ってことにします」

問題意識を仮置きしてみるというのはいいね。それでとりあえず進めてみよう。

「網羅」と「分類」のための「情報地図」をイメージしよう

「つぎに、さくらさんの調べ方がまずかったのは、いきなり望む情報を手に入れようとしたこと」

そんなに都合良く転がっていないのです、情報というものは。

「だったらどうしたらよかったんですか?」

「喜多さんは、いきなりストライクを狙いに行くのではなくて、情報の比較をするためにも、『網羅と分類』のプロセスを経ることを勧めている(前掲書30-32頁)」

私の考える「網羅」とは、お題に関して考えられるすべてのキーワードをピックアップし、それらを手掛かりにソースを当たり、あらゆる情報を集めることです。文字通り大きな網を投げて、そこにある産物を漏れなくすくいとるようなイメージです。(前掲書30頁)

またいきなりストライクの情報を求めても、まず何がストライクの情報なのかは、比較する対象が無ければ判断できません。情報は、つねにつながりの中で意味を持つのです。このことは情報を扱う上で忘れてはならないことで、網羅と分類の過程を通じて、その位置づけを知ることができます。(前掲書31-32頁)

「そして、核になる情報をきちんと見つけるために、知っているつもりのことばでもきちんと調べ直して、と言っているんですね」

これに続いて、情報地図の大切さを示すエピソードとして、「ゾウの種類は二種類かと思って調べはじめてみたら、最新の知見によると三種類かもしれない(し、そうでもないかもしれない)と言うことが分かった」という経緯が載っています(前掲書36-38頁)。

「分類については今日は時間が無いから割愛するけど、ここまででもさくらさんの疑問にすこし方向がみえてきたんじゃないかな」

「割と信用できそうなメディアに載っている情報をもう一度丹念に洗い直すところからはじめてみるべきだったんですね」

「それで、そのあとは?」

「ええと、クラウドファンディングについて、もっと類似のキーワードとか、どんな場面で使われるかとか、思いつくだけキーワードあげてみたり」
「スープやさんが使ったサービスだけじゃなくて、他のサービスの名前も含めて評判を探してみたり」
「歴史はどれくらい前からあるものなのか、もっと進んでいる国はあるのかとか」
「クラウドファンディング以外にどういう資金調達がありうるのかとか」
「なんだ、まだまだやることいっぱいあるじゃんか」

 検索編、続きます

「それじゃ、さっそくここで調べはじめてみますか・・・っと・・・」

目的をはっきりさせて、地図を意識して・・・ようやく、検索してもいい様な心構えができたところで、次回に続きます。

◇ぱうぜセンセのメモ◇

なんでこの本を「アカデミックリサーチの技法」という授業で参考書指定したのか、っていうところも語りたかったんだけど、まだまだ道は遠いなあ。
もっともね、この本はブロガー必読本だと思うよ、ほんと。2回分使っても紹介しきれないくらい良いことたくさん書いてあるから。

編集後記

ということで、次回にも続きます。なお、この本に出会ったきっかけになった記事はこちらです。


2012-03-16 – 死んだ目でダブルピース
中山涙さんの本書紹介に衝撃を受けました。本書はいろいろな切り口で学べる本でして、この記事とは異なる重要なところに触れてます

中山涙さん自身も相当なリサーチの鬼でして、その取材力から生まれた本もお勧めです。

なお、元ネタになっている「クラウドファンディングで資金を集めたスープやさん」は、本郷三丁目にあるSign with Meです。
Social Cafe Sign with Me
手話や指さしで注文するカフェです。味もコンセプトもよいのでおすすめ

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